
手のひらや足の裏に繰り返しできる発疹や皮むけ、強いかゆみ。症状はよくなったり悪くなったりを繰り返すので、不安を抱えているひとも多い皮膚疾患です。
今回は、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断された36歳女性の症例をご紹介します。数件の皮膚科を受診し、ようやく診断がついたものの、なかなか変化がみられない状態で来店されました。
身体全体の状態に目を向けた結果、少しずつ変化がみられた経過をお伝えします。
月経や疲れは関係する? 症例から見えた身体のサイン
皮膚症状だけを見ると気づきにくい身体のサインがあります。症例の女性も皮膚だけでなく、月経や気分の変化など、全身の状態を一緒に確認しました。
7年間続いた皮膚症状と改善がみられなかった治療経過

女性が初めて来店されたのは、令和7年9月。7年前から手のひらや足の裏に発疹ができ始め、数件の皮膚科を受診しました。かゆみ止めやステロイド軟膏が処方されましたが、当初は病名もはっきりせず、蕁麻疹と診断された時期もあったそうです。
その後、医大病院で掌蹠膿疱症と診断され、紫外線療法も受けましたが改善は思うように進まず、漢方相談へ来られました。
初回相談で見えてきた皮膚以外の不調
初回来店時は、足の裏から膝下にかけて皮むけやかゆみが強く、足裏は触ると熱をもっていました。女性の皮膚疾患は、生理とも関係していることがあります。
- 口が渇く
- 生理前になるとイライラや落ち込みが強い
- 生理痛がある
- 経血に塊が混じる
という状態も確認できました。
漢方では、生理痛や経血の塊を瘀血(おけつ)、生理前の気分の変化を肝気鬱結(かんきうっけつ)と考えます。皮膚だけではなく身体全体の状態を踏まえて漢方薬をお選びしました。
1か月で身体の変化が現れてきた

漢方薬の服用から約1か月後、生理前のイライラが軽くなりました。ご本人より先に、ご家族が変化に気づいたそうです。経血の塊も以前より小さくなり、皮膚の赤みや強いかゆみも少しずつ落ち着いてきたのです。
現在は、新しくできる発疹は減っていますが、乾燥によるかゆみ(血虚|けっきょ)が残っています。疲れ(気虚|ききょ)がたまるとかゆみが強くなる傾向もあるため、現在は気虚にも配慮しながら漢方薬を続けていただいています。
※紹介した内容は一例であり、漢方薬による変化や服用期間には個人差があります。医療機関で治療中の方は治療を中断せず、主治医と相談しながら進めてください。
※写真はご本人の同意を得て掲載しています。
全身の状態にも目を向けたい疾患

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に無菌性の膿疱(のうほう)を繰り返す、慢性の皮膚疾患です。手のひらや足の裏に繰り返し症状が現れることが多く、見た目のつらさのほか、歩く・物を持つといった毎日の動作にも影響します。
繰り返し現れる症状
最も特徴的なのは、手のひらや足の裏に現れる膿疱。症状の経過は以下の通りです。
- 皮膚の赤みやかゆみが現れる
- 透明な水疱ができる
- 黄色みがかった膿疱へと変化
- 乾燥するとかさぶたになり剥がれ落ちる
皮疹の出始めにかゆみが強く現れますが、皮膚が厚く硬くなりひび割れが生じると、歩行時や物を握る際に痛みを伴います。
皮膚以外にも、以下のような症状が出る場合もあります。
- 爪の変化:爪が濁る・厚くなる・変形する
- 関節症状:鎖骨・胸の中央・腰などの関節や骨に炎症が生じて痛みが出ることがある
- 手足以外の皮疹:すね・膝・肘・体幹などに赤いカサカサした皮疹が現れる
周期的によくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。
皮膚科での治療
皮膚科の治療は、症状の程度や生活背景に応じて、複数の治療法を組み合わせて行います。塗り薬ではステロイド・活性型ビタミンD3・保湿剤などが使われ、飲み薬や紫外線療法などを併用する場合もあります。
皮膚症状への治療と並行して、症状を悪化させる要因を取り除くことも大切です。医師から禁煙や扁桃炎・歯周病などの治療を勧められることもあります。
治療効果には個人差が大きいので、改善するひともいれば効果が限定的なひともいるでしょう。
漢方では身体全体のバランスに目を向ける
皮膚科では皮膚症状を中心に治療が進められますが、漢方では身体全体のバランスをみます。皮膚症状の背景にある体質や全身状態を確認していくのです。皮膚に現れている症状も、身体からのサインのひとつと考えるからです。
漢方では、皮膚の働きは五臓の「肺」と関わりが深いと捉えます。慢性的な症状では、生命力・成長・老化に関係する「腎」の状態にも目を向けます。ここでいう肺や腎は、西洋医学の肺や腎臓の機能と同じ意味ではありません。皮膚の状態だけでなく、体質や全身の不調を整理するための、漢方独自の考えかたです。
皮膚だけではなく身体全体を整える視点

今回の症例で、皮膚疾患が身体の全身状態と連動していることをわかっていただけると思います。漢方では病名だけではなく、その方がどのような毎日を送り、どのような不調を抱えているのかを大切にしています。
月経と皮膚症状
女性の身体は、月経周期に合わせてホルモンバランスが変化します。月経前に症状が悪化したり、PMS(月経前症候群)が強かったりする場合は、皮膚症状との関わりがあるかもしれません。
漢方では、生理痛や経血の塊は瘀血(おけつ)、イライラや気分の落ち込みは気滞(きたい)と捉えます。皮膚だけを見るのではなく、身体全体の状態と照らし合わせると、体質を知る手がかりが見えてくる場合があるのです。
疲れとかゆみの関係
「疲れがたまるとかゆみが強くなる」と相談に来られる方もいます。症例の女性にも、疲労時にかゆみが悪化する傾向がみられました。疲れているときや風邪をひいたときなどに悪化することが多いんですね。
掌蹠膿疱症には喫煙や慢性的な炎症など複数の要因が指摘されており、ストレスや睡眠不足なども関連すると考えられています。
身体全体の元気が不足すると、皮膚にも影響が現れやすいのです。十分な休息やストレス管理といった全身状態のケアも重要です。
一人ひとりの体質を大切に考える
掌蹠膿疱症の原因はひとそれぞれ。喫煙が主な原因であるひともいれば、扁桃炎や歯周病などの病巣感染が強く関与しているひともいます。複数の要因が重なっているケースも少なくありません。
漢方では一人ひとりの体質や生活の様子を詳しく伺い、その方に合った方法を考えていきます。どんなときに悪くなるのかを自身で把握するのも、ケアを考えるうえで大切です。
皮膚疾患は身体全体と連動している

掌蹠膿疱症は、皮膚症状への治療に加えて、全身状態や生活背景に目を向けると新たな手がかりが見つかる場合があります。今回紹介した症例でも皮膚症状だけでなく、月経・PMS・疲れやすさなど身体全体の状態を詳しく教えていただき、経過を見守りました。
長く続く皮膚症状は、身体だけでなく心にも負担をかけます。治療を続けているのに変化が感じられないときは、身体全体の状態を見直してみるとよいかもしれません。皮膚の状態にお悩みの方はどうぞご相談くださいね。




