暑い日が続くのに、足元は冷える。一方で、顔だけがカーッと熱くなり、汗が止まらなくなる……。

更年期の冷えのぼせは、上半身がほてる一方、下半身が冷える症状です。矛盾しているようですが、店頭相談でもよくお聞きします。上半身のほてりが強いため、冷えを自覚しにくい場合もあるんですね。

更年期の冷えのぼせについて、漢方の考えかたも交えながらお伝えしましょう。

暑いのに冷えるのはなぜ? 冷えのぼせとは

顔は暑いのに足が冷たい状態は、更年期によくある症状です。身体のなかでどのような変化が起きているのでしょうか。

冷えのぼせの特徴

発汗・のぼせ・動悸などが上半身に出る一方、手足や腰など下半身には冷えを感じるのが冷えのぼせです。ホットフラッシュも更年期の代表的な症状ですが、冷えのぼせは下半身の冷えを伴うのが特徴です。

「寒いほどエアコンが効いていても、顔には汗をかく」
「夜になるとほてって眠れないのに、足は冷たい」

このようなご相談をいただくことも非常に多いです。

女性ホルモンと自律神経が体温調節に影響する

更年期は女性ホルモンの分泌が大きく変化する時期。冷えのぼせが起こる最大の原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の急激な減少です。

エストロゲンが減少すると、体温調節・血流・発汗などをコントロールする自律神経のバランスが崩れてしまいます。本来下半身を巡るはずの血液が上半身に集まり、冷えとほてりが同時に現れるのです。

漢方では冷えのぼせをどう捉える?

上熱下寒

上半身は熱く下半身が冷たい状態を上熱下寒(じょうねつげかん)と呼びます。

漢方の理想は「身体の熱が全身を巡り、上半身と下半身のバランスが保たれている状態」です。ところがホルモンバランスの変動やストレスなどが重なると、熱が上半身に偏り、下半身が冷えた状態になりやすいのです。

腎と肝の関係

腎(じん)は成長や生殖を司る役割のほか、身体を温めたり潤いを保持する働きがあります。更年期は腎の機能が少しずつ低下する時期で、冷えや血の滞りが起こりがちです。

一方で、肝には気血の巡りを調節する疏泄(そせつ)という働きがあります。この働きが乱れると、熱が上半身へ偏りやすくなり、上熱下寒が生じると考えられています。

腎の衰えに肝の乱れが加わり、冷えのぼせの症状が現れるのです。

気血水との関係

体内を循環し、お互いに影響し合いながら健康を保つのが気血水です。気血水の巡りや量のバランスが崩れると、冷えのぼせの症状が起こりやすくなります。

気血水は密接に関連しているので、どれかひとつの異常が他の要素にも悪影響を与えることがあります。

夏の環境は冷えのぼせを招きやすい

冷えのぼせは更年期だけが原因ではありません。毎日の生活習慣や夏特有の環境が重なると、身体のバランスはさらに崩れやすくなります。

血行不良

夏は屋内外の気温差が激しく、体温調節がうまくできなくなりがち。エアコンが効きすぎた部屋に長時間いると、体温を逃がさないよう血管が収縮するので、血行不良が起こりやすくなります。

水分代謝異常

血行不良が長く続くと身体の巡りが滞り、水分代謝がうまくできなくなるため、むくみが生じることも。むくみはさらに冷えのぼせを悪化させる場合があります。

漢方では、脾胃(胃腸)の虚弱による気血不足や水分代謝の乱れが冷えのぼせを起こすと考えられています。

自律神経の乱れ

血行不良やむくみによって身体がますます冷やされると、人間の身体は守りの体制に入ります。脳だけは温度が低下しないよう、末梢の体温を下げて守ろうとするんですね。

体温調節がうまくいかなくなると、自律神経にも負担がかかります。血流の調節に偏りが生じるため、上半身はほてるのに下半身は冷える状態が続きやすくなります。

夏の冷えのぼせを改善するケア

夏の冷えのぼせには、一時的なケアと日常ケアを区別して対応しましょう。冷えているところとほてりを感じるところが混在しているので、それぞれに適したアプローチが必要です。

ほてりを冷ます一時ケア

のぼせやほてりを感じたときは、顔や腋の下を冷やして一時的に熱を逃がしましょう。冷たいタオルや布で包んだ保冷剤などを当てます。腋の下には太い血管が通っており、熱を逃がしやすい部位です。

身体全体を冷やすのは逆効果なので避けてください。上熱下寒が強まる場合があります。

冷えを改善する日常ケア

衣類で温度調節

上半身は薄い衣類を重ね着し、温度によって脱ぎ着できるようにしましょう。汗をかいたまま冷房が効いた室内にいると、汗が冷えて身体を冷やしてしまいます。夏は吸汗速乾性の高いインナーがおすすめです。

反対に、冷えやすい下半身はしっかり保温しましょう。冷房対策として、インナーパンツ・レッグウォーマー・靴下などの利用を。お腹周りも冷えやすいので、腹巻を使うのもよいでしょう。

身体を温める

首の後ろには頸動脈という大きな血管が通っているので、ここを温めると温かい血液を全身に巡らせる助けになります。副交感神経が優位になり、自律神経のバランスも整います。

夏はシャワーだけで済ませがちかもしれませんが、湯船に入りましょう。38〜40℃程度のお湯にゆっくり浸かると心身がリラックスし、血行を促進できます。長時間の入浴はのぼせを招きますので注意してください。

生活リズムを整えて腎を養う

ストレッチや軽い運動

運動不足は血行不良や自律神経の乱れにつながります。冷えやすい下半身の筋肉を動かしましょう。激しい運動ではなく、心地よく身体を動かせる程度で十分です。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動で、気血を巡らせましょう。

水分摂取と食事

水分補給は大切ですが、キンキンに冷えた飲みものはNG。常温または温かいものがおすすめです。冷たい飲みものは、いったん口のなかで留めてから飲み込むだけでも違います。

身体のなかでエネルギーを作り出すためには、3度の食事でしっかり栄養をとるのがとても大切。ビタミンB・C・Eなどを意識してみてください。

睡眠とストレスケア

睡眠不足やストレスが続くと、身体のリズムが崩れやすくなります。夜更かしが続いたり、疲れをため込んだりすると腎に負担がかかり、冷えのぼせを悪化させる原因になります。

毎日同じ時間に起きる、十分な睡眠をとる、食事を規則正しく摂るなど、生活リズムを整えましょう。自分なりのリラックス法で気持ちを緩めたり、起床時に太陽の光を浴びるのも自律神経の切り替えに役立ちます。

下半身が冷えるひとは注意して!

冷えのぼせは冷え性の一種で、年齢や性別を問わず誰にでも起こる可能性があります。冷え性にはいくつかタイプがありますが、もともと下半身が冷えやすいタイプのひとは、更年期に冷えのぼせの症状が出やすいんですね。

デスクワークなどで長時間座りっぱなしだったり、運動不足で足の筋肉が衰えていたりすると、下半身が冷えやすくなります。夏は冷房の使用や冷たいものの飲食で、案外身体が冷えています。日常ケアや生活習慣の見直しをしてみましょう。

冷えのぼせのご相談では次のような漢方薬を選ぶことがあります。

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
  • 温経湯(うんけいとう)
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)

同じ冷えのぼせでも、上熱下寒が強いひともいれば、気血の巡りが影響しているひと、腎の衰えが関わっているひともいます。

体質や身体の状態により対応できる漢方薬が違いますので、必ず薬剤師に相談してくださいね。

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