
髪がボリュームダウンした。分け目から頭皮が露出している。更年期の女性が経験する自然な変化ですが、ショックですよね。
しかし適切なケアで改善することが可能です。漢方医学の視点から更年期の薄毛について解説します。原因と対策を知り、ハリとコシのある髪を取り戻しましょう。
更年期の薄毛の原因と症状

女性ホルモンの減少がもたらす影響
髪の成長サイクルは、成長期→退行期→休止期の3つの段階。女性ホルモンのエストロゲンは、髪の成長サイクルを正常に保つ大切な役割を担っています。
45歳を過ぎると多くの女性は更年期に入り、エストロゲンの分泌が急激に減少します。相対的に男性ホルモンの影響が強くなるんですね。通常、髪の毛は2〜6年かけて成長しますが、ホルモンバランスの変化により成長期が短縮され、十分に成長する前に抜け落ちてしまうことがあるのです。
また、エストロゲンが減少すると頭皮の血流が悪くなり、髪に必要な栄養が行き届かなくなってしまいます。
あなたの髪に起きていること

更年期の薄毛は徐々に進行していくため、気づいたときには状態が進んでいることが多いんですね。主な症状には以下のようなものがあります。
- 髪のボリュームの減少
髪の全体的なボリュームが減りペタンとした印象になる - 分け目の拡大
髪の分け目が以前より広く見える - 頭頂部の薄さ
頭の上部の髪が薄くなる - 髪の毛の細さ
髪が細くなりコシやハリがなくなる - 抜け毛の増加
以前より多くの髪が抜ける
女性の薄毛は男性のように一部分が極端に薄くなるのではなく、全体的に密度が減少していくのが特徴です。そのため、初期段階では気づきにくいかもしれません。
気づかないうちに悪化する生活習慣

わたしたちが日々さらされているストレスが薄毛を悪化させる大きな要因となっている場合が多いです。
ストレスを感じると、コルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは血管を収縮させ、頭皮の血行を悪くします。その結果、必要な栄養が届きにくくなり、髪の成長に悪影響を及ぼすんですね。
ストレスによる睡眠の質の低下も薄毛と関係があります。睡眠中は身体の修復や成長ホルモンの分泌が活発になり、髪の成長にとって重要な時間なのです。睡眠不足が続くと、髪の健康に悪影響を与えてしまいます。
また偏食なども、髪の成長に必要な栄養不足を招きます。特にたんぱく質・鉄分・亜鉛・ビタミンB群などは髪の健康に欠かせない栄養素なんですよ。
漢方医学から見る薄毛の本質

「血虚」栄養が届かない頭皮の状態
漢方医学では、髪の毛は血の余りであると考えられています。身体に十分な血があり、余った血が髪となって現れるのです。逆にいえば血が不足すると髪に栄養が行き渡らず、薄毛や抜け毛の原因となります。
血が不足した状態を「血虚(けっきょ)」と呼びます。更年期に入ると女性は生理がなくなり、血の巡りや量に変化が生じます。頭皮まで血が行き届かなくなり、髪の毛の成長が妨げられるんですね。産後に抜け毛が増えるのも、授乳に血がとられて頭皮まで栄養が回らなくなるためなのです。
血虚になると髪だけでなく、爪や肌にも影響が現れます。爪がもろくなったり、肌の潤いが失われたりするのも、血の不足が原因と考えられます。
「腎虚」加齢による影響と対策

「腎」は髪の健康と密接に関わっています。漢方医学でいう腎は西洋医学の腎臓とは異なり、身体の根本的なエネルギーや生命力を司る器官として捉えられています。
更年期は腎の力が弱まりやすい時期なんですね。腎の力が弱まった状態を「腎虚(じんきょ)」と呼んでいます。腎虚になると髪の成長力が低下し、白髪や薄毛が進行します。
「気滞」ストレス社会を生きる現代女性の課題
忙しい生活の中で多くの女性が抱えるのが「気滞(きたい)」の問題です。「気」とは身体のエネルギーの流れのことで、エネルギーがスムーズに流れないと気滞の状態になるのです。
ストレスや緊張、怒りなどの感情は気の流れを滞らせる大きな原因。気の流れが悪くなると血行も悪くなり、結果として頭皮に栄養が行き渡らなくなるんですね。
気滞の症状として、イライラ感・憂うつ感・肩こり・頭痛などが現れることが多いです。これらの症状に加えて薄毛が気になる場合は、気滞による血行不良が影響している可能性がありますよ。
薄毛改善のための漢方アプローチ

あなたの体質は?
同じ薄毛の症状でも、原因や体質によって最適な漢方薬は異なります。まずは自分の体質を知りましょう。効果的な選薬の第一歩となります。
漢方の薬剤師が体質を判断するためには、以下のような要素を考慮します。
- 症状の観察
髪や肌の状態・身体の不調・疲れやすさなど - 生活習慣
食生活・睡眠・運動習慣・ストレスレベルなど - その他
仕事内容・病歴・家族歴など
当店ではカウンセリングにより、さまざまな側面から総合的に判断します。例えば、顔色が青白く、冷え性で疲れやすい方は「血虚」の傾向があり、顔が赤みがかってイライラしやすい方は「気滞」の可能性があるんですね。
体質が重なっていることもありますので、自己判断は避けましょう。
症状別・漢方薬の選び方

薄毛の症状と体質に応じて、以下のような漢方薬を選薬することがあります。
あくまで一般的な例であり、個人によって最適な漢方薬が異なることに注意してください。
血虚が原因の場合
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 四物湯(しもつとう)
血を補う漢方薬です。鉄分を含む生薬を配合し、血の巡りをよくする働きがあります。
腎虚が原因の場合
- 六味地黄丸(ろくみじおうがん)
- 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
腎を補うとされる漢方薬。加齢による変化に対応するため用いられます。
気滞が原因の場合
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
女性特有の症状に用いられる代表的な漢方薬。気の巡りを整える働きで知られています。
日常生活での実践ポイント

薄毛の改善には日常生活の見直しも重要です。以下のポイントを意識して、漢方薬との相乗効果を高めましょう。
- バランスのよい食事
髪の成長に必要なたんぱく質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取しましょう。血を補う食材として、レバー・ほうれん草・黒豆などがおすすめ。 - 適度な運動
無理のない範囲で定期的に運動しましょう。血行が促進され、頭皮の健康につながります。ウォーキングやヨガなど、リラックスしながらできる運動を。 - 質のよい睡眠
睡眠は身体の回復に欠かせません。特に午後10時から午前2時は、身体のゴールデンタイム。この時間帯にぐっすり眠ることで、髪の成長ホルモンの分泌が促されます。 - ストレス管理
自分なりのリラックス方法を見つけることが大切です。趣味の時間を持つ、入浴でリラックスする、深呼吸を意識するなど、小さな習慣から始めましょう。 - 頭皮マッサージ
指の腹を使って頭皮を優しくマッサージ。血行が促進されます。シャンプー時や入浴後に、数分間行うと効果的です。
ひとりで悩まずご相談ください!

更年期の薄毛は女性ホルモンの減少による自然な変化ですが、適切なケアで改善できる可能性があります。漢方医学の視点からは「血虚」「腎虚」「気滞」などの状態が薄毛に関わっており、これらを改善することが大切なんですね。
漢方薬は西洋薬とは異なり即効性はありませんが、身体全体のバランスを整え根本的な改善を目指します。効果が現れるまでには時間がかかることがありますが、継続していくと徐々に変化を感じられるでしょう。
重要なのは、自己判断で漢方薬を選ぶのではなく、専門家に相談することです。選薬を誤ると、漢方薬といえども副作用が起こる可能性がありますよ。
当店では体質・生活習慣・お悩みをじっくりお聞きしたうえで、最適な漢方薬をご提案します。あなたに合う漢方薬と生活アドバイスで、ハリとコシのある健やかな髪を取り戻すお手伝いをします。ぜひご相談くださいね。