脾の働きと体調管理のカギ【五臓六腑から健康を学ぼう】
東洋医学では、脾(ひ)は非常に重要な臓。
消化吸収・エネルギーの生成・体内の水分バランスの調整など、健康を保つために欠かせない多くの役割を果たしています。
脾の機能が正常であれば、全身の健康を支える土台となるのです。
脾の健康を保つための具体的な方法を紹介します。
五臓六腑の脾とは
まずは、脾の主要な働きである「運化」「昇清」「統血」についてわかりやすく説明しましょう。
運化(うんか)
脾は、胃や小腸で消化吸収された飲食物を精(栄養分と水分)に変え、身体全体に運びます。この働きを運化といいます。
脾は精(栄養分と水分)を抽出してエネルギー源としますし、身体の組織や器官の修復にも使うんですよ。
運化は字のごとく「消化(化)と運搬(運)」の意味が含まれています。脾が飲食物から得た栄養と水分を全身に行き渡らせ、身体全体の水分バランスを調整するのです。
昇清(しょうせい)
昇清とは、脾が消化・吸収した栄養分や水分を心と肺に昇らせる働きです。この作用により、心と肺で気や血が作られ、全身に送られるのです。
また、昇清は内臓を一定の位置に保つ役割も持っています。
脾の昇清作用のおかげで、栄養分や水分は小腸から心・肺へと適切に移動し、内臓が正しい位置を維持できるんですね。
統血(とうけつ)
統血とは、脾が血液を脈内に保ち正常に循環させる働きです。血液が脈から漏れ出るのを防いでいます。
統血作用が正常であれば、出血することなく、血液が全身に安定して供給されます。体内の血液循環がスムーズになるように働いているんですね。
五臓六腑についてはこちらをどうぞ!
五臓六腑にしみわたる〜! さて五臓六腑ってどこでしょうか?
脾の不調で現れる症状
消化吸収が正常に働かなくなる
脾の運化作用が低下すると、食べ物を適切に消化吸収できなくなり、以下の症状が現れやすくなります。
- 食欲不振
- 消化不良
- 胃の膨満感
消化がうまくいかないと身体に必要な栄養素が不足し、エネルギー不足や疲労感を感じることが多くなります。
気血が不足する
脾は気血を生成する役割があります。脾が弱ると気血の生成が不十分となり、貧血や無気力といった症状が現れます。貧血により月経量が減ることも。
気血の不足は全身に栄養が行き渡らなくなる原因であり、結果的に身体全体の機能が低下します。これにより引き起こされるのが以下のような症状です。
- 肌荒れ
- 冷え性
- 筋力の低下
気血水についてはこちらをお読みくださいね。
漢方入門|漢方の考え方【気血水】
くよくよと思い悩んでしまう
脾は感情面にも影響を与え、特に「思(思慮)」と関係があります。脾の不調は、くよくよとした悩みを引き起こしやすいのです。精神的なストレスが脾の機能をさらに低下させ、気滞を招く……という負のループに陥ってしまいます。
- 消化不良
- 気分の落ち込み
- うつ状態
精神状態の不調は、我慢しすぎてしまうこともあります。
気滞についてはこちらをどうぞ!
よくわかる漢方・あなたの体質は?⑤【気滞|エネルギーの循環不足】
そのほかの異常
適切な水分代謝ができない・消化不良などで
- 胃がチャポチャポする
- 下痢をしやすい
- むくみ
脾が口につながっているための不調
- 口内炎・口角炎
- 唇が荒れている
昇清作用(内臓を安定させる)が低下すると
- 胃下垂
- 脱肛
統血作用(血が漏れるのを防ぐ)が低下すると
- 内出血
- 月経がダラダラ続く(止まりにくい)
- 血尿
脾の健康は全身のバランスを保つために非常に重要です。これらの症状を感じたら脾の機能を見直し、適切な対策をとりましょう。
脾の不調を補うには
規則正しい食生活
一日三食を、なるべく同じ時間にとりましょう。規則正しい食事は、脾が食物を効率的に消化吸収し、必要な栄養素を取り入れるために重要なんです。
特に朝食は一日の始まりに必要なエネルギーであり、脾の働きを活発にさせるため欠かせません。また、深夜の飲食を控えると消化器官が休まり、脾の負担を減らせますよ。
冷えを避けお腹を温める
エアコンや外気からの冷えを避け、お腹を冷やさないようにしましょう。脾は冷えに弱いのです。身体が冷えると脾の機能が低下しやすくなります。
温かい飲み物や食事を心がけ、腹巻きや適切な服装でお腹を温めるとよいですね。冬場や冷房の効いた室内では意識しましょう。
ストレスをためこまない
ストレスは脾の機能を低下させる大きな要因です。自分に合ったリラックス方法を見つけ、ストレスを発散しましょう。
- 趣味に没頭する
- 深呼吸や瞑想を行う
- 自然の中で過ごす
心身をリラックスさせる活動を日常に取り入れるとよいですね。ストレス管理がうまくいくと、脾の健康も維持しやすくなりますよ。
そのほかの方法
- バランスの取れた食事を摂る
偏食を避け、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。甘いものや炭水化物は控えめに。野菜やたんぱく質をバランスよく食べてくださいね。
- 適度な運動をする
定期的に身体を動かし、血行をよくしましょう。ウォーキング・ヨガ・軽いストレッチなど、無理なく続けられる運動を。
- 十分な睡眠をとる
睡眠は身体全体の回復と共に、脾の機能をサポートします。質のよい睡眠を確保するには、規則正しい生活リズムを維持すること。リラックスして眠れるようになりますよ。
湿気と脾の関係を知り、健康を守りましょう
脾は湿気に弱いとされています。東洋医学では、湿邪(しつじゃ)と呼ばれる湿気が体内に侵入すると、脾の機能が低下すると考えられているんですね。梅雨から夏にかけては脾の不調を補うよう心がけてください。
身体に水分がたまっているような感じを経験したことがあると思います。身体が重くて、だるさや疲労感がありますよね。身体の水分量を適度に保つのって本当に大切なんです。
脾は胃や口につながっているので、消化不良や口内炎などの不調も現れやすいんですよ。
脾が弱ると身体がエネルギー不足を感じ、甘い物を異常に欲することもあります。
食生活の乱れはないのに毎日のアイスクリームがやめられない! という方も。これでは胃の不調もよくなりません。
わたしは「甘いものが食べたくなったらドライフルーツや果物に置き換えてみてくださいね」とアドバイスしています。
日本で暮らす以上、湿気と無縁ではいられませんね。本記事を参考に、生活を工夫してください。
下記は脾を保護するため処方する漢方薬の一例です。あなたの体質に合わせて漢方薬をお選びします。
- 六君子湯(りっくんしとう)
- 四君子湯(しくんしとう)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 安中散(あんちゅうさん)
- 五苓散(ごれいさん)
このような症状がありましたらお早めにご相談くださいね。
- 消化不良
- 食欲不振
- 疲労感
- むくみや腹部の膨満感
カウンセリングと漢方薬で梅雨と夏を乗り切りましょう。
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