赤ちゃんを望んでいるのになかなか妊娠できないのはなぜでしょう。原因のひとつに「子宮内フローラの乱れ」があげられます。

研究が進み、子宮内の細菌環境が妊娠に大きく関わっていることが明らかになりました。妊娠しやすい身体づくりのカギとなる、子宮内フローラの検査についてお伝えしましょう。

子宮内フローラ検査とは?

子宮内の細菌バランスを知る

子宮内フローラ検査は、子宮内の細菌環境を調べる検査です。細菌を採取し、善玉菌と悪玉菌のバランスを見るのです。子宮内フローラ検査は2010年以降広まり、今では多くの不妊治療クリニックで受けられるようになりました。

  • 検査方法①
    子宮内の粘液を採取するもの。細菌のDNAを分析します。痛みはほとんどありません。
  • 検査方法②
    子宮内膜の組織を採取。より詳細な組織検査が可能です。生理痛のような痛みや少量の出血を伴うことがあります。

検査後2〜3週間で結果が出ます。どちらも子宮内フローラの状態を調べるのに有効ですが、検査の目的や医療機関により採取方法が異なる場合があります。医師と相談して、ご自身に適した方法を選んでくださいね。

注意していただきたいのは、保険適用外のため全額自己負担になる点です。理由は、子宮内フローラ検査が先進医療と認定されているためなんですね。検査を希望する場合は、事前に費用を確認しましょう。

検査でわかる3つの重要ポイント

検査結果からは、以下の情報が得られます。

  • 善玉菌と悪玉菌の比率
  • 特定の悪玉菌の存在量
  • 炎症の有無

善玉菌の占める割合や、悪玉菌の量が数値で示されます。ガードネレラ菌・連鎖球菌などの悪玉菌が多い場合は、フローラのバランスが崩れています。子宮内膜の免疫反応が強くなり炎症を起こすことがあるため、妊娠に影響を与えるといわれているのです。

特にガードネレラ菌は、流産や早産、不妊症になる可能性があると示唆されています。適切な治療でフローラの改善が期待できますよ。

善玉菌90%以上が理想の環境

多くの専門家は「善玉菌である乳酸菌(ラクトバチルス菌)が90%以上を占めているのが理想的な環境」としています。悪玉菌が少量存在していてもだいじょうぶ。ラクトバチルスは悪玉菌の増殖を抑える働きがあるので、子宮内の健康を保ってくれるのです。受精卵が着床しやすくなるとの研究結果もあります。

逆に悪玉菌がゼロの状態は、自然界では難しいといわれています。少量の悪玉菌は適切な免疫系の反応を促す役割もあり、必要なんですね。善玉菌と悪玉菌は共存しており、悪玉菌を増殖させないためのバランスが重要なのです。検査結果では両者のバランスに注目してみてください。

子宮内フローラが乱れる3つの原因

抗生物質の使用

風邪や感染症の治療で抗生物質を服用すると、悪玉菌だけでなく善玉菌も減少してしまいます。特に広域スペクトラム抗生物質は影響が大きいですね。広域スペクトラム抗生物質は複数の細菌に対応できるもので、感染症の治療などに用いられています。

抗生物質使用後にフローラが回復するまでの期間は個人差があります。抗生物質の種類や投与量、体質によっても違いが出るため、数週間〜数ヶ月とまちまちなのです。

過度の清潔志向

デリケートゾーンの環境は弱酸性です。この環境が善玉菌の繁殖を促し、悪玉菌の増殖を抑えるのに最適なのです。

洗浄剤の過剰使用や温水洗浄便座の頻繁な使用は、自然な酸性環境を弱めてしまうんですね。週に5回以上ビデを使用することがラクトバチルスの減少に関連している、という研究結果もあります。適切なケアでデリケートゾーンの健康を維持しましょう。

  • 洗浄の頻度を控える
  • 温水洗浄便座の使用を控える
  • 専用の洗浄剤を使用する

ぬるま湯で軽く流すだけでも、デリケートゾーンの清潔さは保てます。しかし生理中やスポーツの後など気になる場合には、低刺激のデリケートゾーン専用ソープを使いましょう。

香料や殺菌成分入りの製品は、善玉菌にとって過酷な環境を作ってしまいます。洗浄の範囲も外陰部までに留めるのが望ましく、膣内を洗う必要はありません。膣内は自浄作用があるので、過剰な洗浄は逆効果なんですね。適切な洗浄方法で、善玉菌を守りましょう。

ストレスと偏った食生活

慢性的なストレスや糖質・加工食品の摂りすぎも、子宮内の環境を悪化させてしまいます。コルチゾールというストレスホルモンが免疫機能を低下させ、悪玉菌の増殖を許してしまうのです。また、ストレスから血流が悪くなると、子宮への酸素や栄養の供給も減少します。

食生活では糖質の過剰摂取に気をつけましょう。砂糖は悪玉菌の栄養源であり、腸内フローラのバランスを崩してしまいます。子宮内フローラと腸内フローラは密接に関係しているため、腸内環境の乱れは子宮内の環境にも影響するんですね。

加工食品に含まれる添加物も、腸内環境を介して子宮内フローラに悪影響を及ぼします。なるべく添加物を避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。

子宮環境を整えましょう

検査結果を元にしたピンポイント対策

検査では自分の子宮内環境がどのような状態にあるのかがわかります。子宮内フローラは主に次の3つに分類されます。それぞれの対策を参考にしてくださいね。

乳酸菌優位型

ラクトバチルス属の菌が90%以上を占める状態で妊娠に適した環境。

【対策】
特に対策は必要ありませんが、以下の点を維持しましょう。

  • 食生活の維持
  • ストレス管理

中間型

ラクトバチルスの割合が90%未満で他の細菌が混在している状態。

【対策】
善玉菌を増やしましょう。

  • 食事の改善
  • サプリメントの摂取
  • 生活習慣の見直し

嫌気性菌(いやきせいきん)優位型

悪玉菌が優勢でラクトバチルスの割合が非常に低い状態

【対策】
専門家に相談しましょう。抗生物質の使用は医師の指導を受けてください。

  • 抗生物質の使用
  • ラクトバチルスの補充
  • 生活習慣の改善

食生活や生活習慣については以下で説明しますね。

生活習慣を見直そう

子宮内フローラの状態は、生活習慣に大きく影響されます。以下の要素を意識的に改善することで子宮内フローラのバランスを保ち、妊娠しやすい環境にしていきましょう。

  • 食生活の影響
    〈発酵食品〉ヨーグルト・納豆・味噌などは乳酸菌が豊富
    〈食物繊維〉腸内環境を整え善玉菌の栄養源となる→子宮内フローラにもよい影響を与える
  • 運動の役割
    運動すると血流がよくなり免疫系の機能が高まる→子宮内フローラのバランスを保つ
  • ストレス管理
    ストレスでホルモンバランスが崩れるとフローラのバランスも崩れやすい。ストレス軽減の方法を知っておく
  • 睡眠の質
    質のよい睡眠は身体全体を支える基盤。規則正しい生活リズムがフローラにも影響する

漢方薬で身体全体からアプローチ

子宮内の環境を整えるために、漢方薬を活用する方もいます。漢方薬は身体全体のバランスを整え、間接的に子宮内環境によい影響を与える可能性があるんですね。

血行を促進する生薬を含む漢方薬、免疫機能をサポートする生薬を含む漢方薬など、さまざまな種類があります。体質に合わせて選ぶのがとても大切ですので、薬剤師に相談してくださいね。

漢方薬は即効性ではなく、じっくりと体質を改善していくものです。2〜3ヶ月は継続してみましょう。様子を見ながらお薬を変更することもありますよ。

身体のバランスが整うとフローラも整います

子宮内フローラ検査は、身体の声を聞く大切な手段です。検査結果をもとに、あなたに合った方法で子宮環境を整えていきましょう。生活習慣の見直しやストレス管理は心身の健康のためとても大切で、子宮内フローラにも影響します。取り組めそうなことからひとつずつ改善できるといいですね。

気血水のバランスが改善されると、子宮環境も整ってきます。例えば、血の巡りをサポートする漢方薬は、子宮への栄養供給を助ける効果が期待できますよ。サプリメントの摂取についてもご相談ください。

わたしは多くの妊活中の方をサポートしてきました。子宮内環境が整うには時間がかかりますが、すぐに結果が出なくても諦めないでくださいね。小さな改善の積み重ねが、大きな変化につながります。

あなたの赤ちゃんとの出会いを、心から願っています!