
年々夏の暑さが厳しくなっていますが、熱中症対策は万全でしょうか。
軽い熱中症であれば適切な対応によって改善する場合もあります。しかし脱水や高体温の程度によっては腎臓にも負担がかかり、急性腎障害(AKI)を起こすことがあるのです。
近年は、熱中症によってAKIが起こり、将来の慢性腎臓病(CKD)につながる可能性も報告されています。
今回は、熱中症が腎臓へ与える影響と、夏の腎臓を守るために心がけたいことをお伝えします。毎年暑さで体調を崩しやすい方、屋外で活動する機会が多い方、健康診断で腎機能を指摘された経験がある方は知っておきたい内容です。
急性腎障害(AKI)とは

熱中症になると、腎臓にも影響が及ぶ場合があります。「脱水・めまい・意識がもうろうとする」などのイメージが強い熱中症ですが、身体のなかでは腎臓にも大きな負担がかかっているのです。
腎臓の働きが急激に低下する状態
腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出する働きをしています。身体の水分量や電解質のバランスを保つなど、生命を維持するうえで欠かせない臓器です。
急性腎障害(AKI)とは、数時間から数日のうちに腎臓の働きが急激に低下する状態を指します。以前は「急性腎不全」と呼ばれていました。
腎機能が急激に低下すると、以下のような問題が生じます。
- 老廃物を排出しにくくなる
腎臓で血液を十分にろ過できず、老廃物が身体にたまる - 体液のバランスが崩れる
体内の水分量や塩分量(電解質)を調節できなくなり、むくみや電解質異常(高カリウム血症など)を引き起こす - 尿量が変化する
尿が出にくくなることもあるが、尿量に大きな変化がないケースも
AKIの原因は多岐に渡りますが、熱中症はその原因のひとつとして近年注目されているのです。
熱中症で腎臓がダメージを受けるのはなぜ?
熱中症で大量の汗をかくと体内の水分や電解質が失われ、血液の巡りが悪くなります。すると血圧が低下し、腎臓へ送られる血液も少なくなります。腎臓は血液が十分に流れることで働く臓器なので、血流の低下が続くと腎機能も低下する可能性があるのです。
重症の熱中症では、高い体温そのものが腎臓の細胞を傷つけたり、筋肉が壊れてしまう「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」を起こしたりする場合があります。筋肉から放出された物質が腎臓に負担をかけ、AKIを引き起こす原因になることが知られています。
熱中症はただの脱水ではなく、全身に影響を及ぼす病気なのです。
将来の腎機能低下につながる可能性
AKIは早く治療を受ければ回復するケースもあります。しかし近年では、一度AKIを起こすと、その後に慢性腎臓病(CKD)へ進行するリスクが高まるとの報告もあります。
AKIを発症した場合は、熱中症の症状が治まったあとも腎機能の経過に注意したいところです。
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状が現れにくい臓器。熱中症を予防することは、将来の腎機能を守ることにもつながります。
熱中症による腎障害は誰にでも起こり得る

熱中症による急性腎障害は誰にでも起こる可能性があり、健康なひとも例外ではありません。特に注意したいひとにはいくつかの共通点がありますので、自分に当てはまるものがないか確認してみましょう。
屋外で仕事や運動をする機会が多い
炎天下で仕事をするひとやスポーツを楽しむひとなどは、注意が必要です。
健康な若いひとでも暑熱環境・脱水・運動が重なると、腎機能が急速に低下することがあります。医療機関を受診した労作性熱中症(※)の患者では、30〜40%がAKIを発症したとの報告もあるのです。
作業や運動に集中していると休憩を後回しにしがちですが、無理を続けると身体の水分不足が進み、腎臓への血流も減ってしまいます。暑さに慣れているひとほど、身体の変化に気づきにくいかもしれません。
※労作性熱中症:激しい運動や肉体労働によって起こる熱中症
高齢者・基礎疾患があるひと
加齢はAKIの発症リスク因子のひとつです。年齢を重ねると喉の渇きを感じにくくなります。きちんと水分をとっているつもりでも、実際には不足していることが多いのです。
健康診断でeGFRやクレアチニン値を指摘されたひと、慢性腎臓病(CKD)・糖尿病・心機能低下などの基礎疾患があるひとは、もともと腎臓へ負担がかかりやすい状態です。
利尿薬など特定の薬を服用しているひとも、水分が排出されやすくなっているので注意が必要です。
水分不足になりやすい生活習慣
喉の渇きを感じる頃には、すでに軽い脱水が始まっていることがあります。
「トイレが近くなるから水分を控えている」「仕事や家事に追われて水分補給を後回しにしてしまう」といった習慣は、知らないうちに熱中症やAKIのリスクを高めているかもしれません。喉の渇きを感じる前からこまめに水分を補給しましょう。
大丈夫と思っていても、身体には変化が現れていることがあります。腎臓への負担を見分けるのに特に注意したいサインは
- 尿の状態(量の変化・泡立ち・血尿・尿の色が濃いなど)
- 食欲不振・吐き気
- 強いだるさが続く
- 足がむくむ
といった変化です。
これらのサインは、他の病気と区別がつきにくいことがあります。気になる症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
暑い季節に見直したい習慣

夏は気温や湿度の影響を受けやすく、身体に負担がかかります。熱中症を防ぐためには、日頃の過ごしかたを見直すことも大切です。
水分補給の基本
喉がかわいていなくても、こまめに水分をとりましょう。高齢者は喉の渇きを感じにくく、汗をかく機能も低下するため、意識的な水分摂取が必要です。
大量に汗をかくときは、スポーツドリンクなどが水分の吸収をスムーズにし、塩分の補給もできます。
朝起きたとき・外出前・帰宅後など、飲むタイミングを決めておくのもおすすめです。
※水分制限が指示されている場合は自己判断で水分摂取量を増減せず、必ず主治医に相談してください。
暑さ対策
熱中症は屋外だけでなく、室内でも発症します。暑さを我慢せず、室内を適温に保ちましょう。就寝中も汗で水分が失われるため、夜間も適度にエアコンや扇風機を活用してください。
外出の際は通気性のよい衣服を選び、帽子や日傘を忘れずに。いろいろな冷却グッズも売られていますので、活用しましょう。首元など太い血管が身体の表面近くを通っているところを冷やすと、効率よく身体を冷やせます。
暑さ指数(WBGT)なども参考にするといいですね。
環境省熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/
暑さに弱い身体に目を向ける
毎年のように熱中症になったり、夏になると体調を崩したりするひともいるでしょう。
漢方では熱中症そのものを治療するというより、体質を整えることを目指します。以下のような症状はありませんか?
- 暑さに弱い
- 体力が落ちやすい
- 汗をかきやすい
- 胃腸が弱い
- 水分代謝が乱れやすい
暑さに弱い体質は、東洋医学的には気虚(エネルギー不足)や胃腸の虚弱、水分代謝の乱れなどが背景にあると考えられています。
同じ熱中症でも身体の状態は一人ひとり異なりますので、体質や生活習慣に合わせた養生を考えることが大切なのです。
熱中症から腎臓を守るために

熱中症は「暑い日に起こる体調不良」というだけではありません。身体のなかでは腎臓にも負担がかかり、急性腎障害(AKI)を起こす場合があります。
回復したように見えても、その後の慢性腎臓病(CKD)のリスクが高まる可能性も報告されているため、一時的なものと軽く考えないことが大切なのです。
特に下記に当てはまる方は注意してください。
- 健康診断で腎機能を指摘されたことがある
- 高血圧・糖尿病などの生活習慣病がある
- 毎年夏になると体調を崩しやすい
暑さ対策だけでなく、腎臓を守るという視点も持っていただきたいと思います。
漢方では熱中症そのものを防ぐだけではなく「暑さに弱い」「汗をかきやすい」といった身体全体の状態にも目を向けます。
熱中症の背景にある体質や生活習慣はひとそれぞれ。身体の状態に合わせて、無理なく続けられる養生法を一緒に考えていきましょう。
厳しい暑さが続きますので、体調に不安がある方はお早めにご相談くださいね。




