
「夜中に何度も目が覚めてしまう」「朝までぐっすり眠れない」など、睡眠に関する悩みを抱えていませんか? 寝不足が続くと仕事や家事の集中力が落ちたり、気持ちが沈んだりすることもありますね。
更年期は、ホルモンの変化によって眠りのリズムが乱れやすくなる時期です。東洋医学では「眠り」にも心と身体のバランスが深く関わっていると考えます。夜中に目が覚めやすくなる原因と、穏やかに眠るためのヒントをお伝えしましょう。
眠りを支える“心と腎”のつながりとは?

眠りはただの休息ではなく、身体と心を整える時間です。東洋医学では「心(しん)」と「腎(じん)」の調和が眠りの質を決めるとされています。
「心」は感情や思考をつかさどり「腎」は生命エネルギーの源。ふたつのバランスが崩れると、途中で目が覚めやすくなったり、眠りが浅く感じられることがあるのです。
心と腎がつながるリズム
心と腎は、水と火のような関係です。考えすぎや感情の高ぶりなどで心が熱くなりすぎると、腎が冷やす力を失い眠りが浅くなります。
一方で、腎のエネルギーが足りないと心を支えられず、不安や焦りが強くなります。更年期は「心腎のバランス」が乱れやすい時期なのです。
血と陰の不足も眠りに影響
女性の身体は「血(けつ)」と「陰(いん)」の働きでうるおいを保っています。年齢とともにうるおいが減ると身体が乾きやすくなり、のぼせや寝汗などが起こりやすくなるんですね。
夜中にふと目が覚めて「暑い」「喉が渇く」と感じるひとは、血虚(けっきょ)や陰虚(いんきょ)のタイプかもしれません。
東洋医学での眠りの捉え方
眠りは「意識が身体に戻る時間」ともいわれます。日中に外へ向いていた気が内に戻り、身体が静まることで深く眠れるのです。
しかし、考えごとやストレスで気が外に散ったままだと、心が落ち着かず眠りも浅くなってしまいます。
更年期に眠りが乱れるのはなぜ?

更年期の睡眠トラブルには、さまざまな背景があります。ホルモンの変化だけでなく、心・身体・生活のリズムが重なりあい影響するのです。
自律神経の乱れ
女性ホルモンであるエストロゲンが減ると、自律神経の働きが不安定になるため、寝つきが悪くなったり夜中に何度も目が覚めたりします。
「3時前後にパッと目が覚める」「眠いのに頭が冴える」と感じるのは、多くのひとに共通する特徴です。
陰虚によるほてりや寝汗
陰が不足すると体内に熱がこもり、顔や上半身がのぼせるように感じます。眠っていても熱がこもって汗をかき、布団をはいだり着直したりしているうちに目が覚めてしまうんですね。
睡眠リズムが崩れるため、翌日の体調にも影響が出やすくなります。
乾燥や季節の変化による刺激
秋から冬にかけては空気の乾燥が進み、呼吸器や皮膚が刺激を受けやすくなります。東洋医学では「肺」と「心」はつながりが深いと考え、乾燥によって心のバランスも乱れることがあるのです。
寝室の温度や湿度が低いままだと夜中に喉が渇き、眠りが途切れる原因にもなります。
深く眠るための3つの習慣

眠りの質を高めるには「心を静める」「身体をうるおす」「夜のリズムを整える」のが大切です。小さな習慣の積み重ねが、心地よい眠りにつながります。
1. 就寝前のクールダウン時間をつくる
寝る1時間前からはスマホを見ない、テレビを消すなど、光と刺激を減らしましょう。湯冷ましをゆっくり飲みながら、1日のできごとを手放すような時間を過ごしてみてください。
脳と心が静まると副交感神経が働きやすくなり、自然と眠りモードに入れます。
2. 陰を補う日常ケアを意識する
身体をうるおす食材をとるのも、陰を補う助けになります。
- 白い食材:豆腐・れんこん・白きくらげ・豆乳・松の実
- 黒い食材:黒ごま・黒豆・あさり・しじみ
- 果物:梨・スイカ・キウイ
- 野菜:白菜・きゅうり・トマト
調理法としては、スープや鍋料理にすると水分を多く摂取できるため、陰を補うのに最適です。
入浴は、熱いお湯ではなく少しぬるめの湯にゆっくり浸かりましょう。38〜40℃程度がよいとされており、寒い時期は40℃くらいが目安です。副交感神経が優位になりリラックスできますよ。身体のほてりも和らいでくるでしょう。
3. 呼吸とストレッチで心を整える
寝る前に深呼吸を3回。ゆっくり吸って、長く吐くことを意識しましょう。軽いストレッチや肩回しもおすすめです。筋肉がゆるみ、体温が少し下がることで、眠気が訪れてきます。
“がんばらない眠り”への合図と思って、ゆったり取り入れてみてください。
眠れない夜に自分を責めないで

「今日も眠れなかった」「また途中で目が覚めた」と感じる夜は、つい自分を責めてしまうかもしれませんね。しかし、眠りは努力で手に入るものではなく、心と身体が安心できたときに自然と訪れるものなんですね。
東洋医学では「心が落ち着けば眠りは自然にやってくる」と考えます。リラックスできる環境を作ったり、生活リズムを整えたりと、工夫してみましょう。きっとあなたに合うリラックス法がみつかると思います。
ほてりや寝汗が気になる方には、身体をうるおす力が弱まった「腎陰虚(じんいんきょ)」タイプが多く、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)が選ばれる場合があります。一方「血虚(けっきょ)」タイプでは加味逍遥散(かみしょうようさん)などの漢方薬が用いられることもあります。眠れない夜が続いてつらいときは、ご相談くださいね。
今日は眠れなかったとしても「そんな日もある」と受けとめてみてください。焦らず、やさしく、自分をねぎらう時間を持つようにすると、心身が穏やかになってくるでしょう。




