秋が深まるとだんだん乾燥が気になってきますね。「肺」は乾燥に影響を受けやすい臓です。肺とはどのような役割を持つのか、肺の不調で現れる症状、肺を潤す方法をお伝えします。乾燥する季節に向けてしっかりケアしましょう。
五臓六腑の肺とは

肺は呼吸をつかさどる重要な役割を果たしています。
肺の働きについて説明しましょう。
気の循環
漢方で「気」とは身体の中を流れる生命エネルギーを指しており、健康維持に不可欠なものです。
気は、食べ物からの栄養や、呼吸から得られる酸素を元に作られます。気が体内を巡ることで体温調整、免疫機能の強化、精神の安定など、身体全体の活力を保つ役割を果たしているのです。
肺が呼吸で取り込んだ酸素は「清気」として全身に供給し、気の循環を促進します。循環がスムーズに行われると血液や水分の流れも整い、体内のエネルギーが安定して供給されるようになるんですね。
水分調整
肺は「水」を全身に運び、体内の水分バランスを保っています。
漢方では、肺は「水の通り道」といわれています。肺が体内の水分を管理する重要な役割を果たしているからです。
肺が呼吸を通じて体内の水分を適切に循環させているため、身体の水分バランスが保たれているんですね。肺の働きにより身体全体の潤いが維持され、乾燥を防いでいるのです。
肺の水分調整には、次のような役割があります。
- 水分の運搬
取り込んだ酸素とともに水分も全身に送る
水分は血液やリンパ液の流れに乗って体内を循環し、各臓器や組織に潤いを届ける - 余分な水分の排出
身体の余分な水分を取り除く - 体内の湿度調整
肺が水分を調整することで肌や粘膜の潤いを保ち、乾燥を防ぐ
防御機能
肺は外界からの邪気(ウイルスや病原菌)から身体を守る役目もしています。肺の防御機能は身体の免疫システムと深く関わっており、健康を保つために非常に重要な働きをしています。
- 外部からの侵入物質を排除
空気中の異物(ホコリ・花粉・病原菌など)を吸い込むと、肺はこれらを排除しようとします。
気道の粘膜には「繊毛」と呼ばれる小さな毛がびっしりと生えています。繊毛が異物を捉えて粘液に包み込み、咳や痰として排出されやすくするのです。 - 免疫機能のサポート
漢方では、病気から身を守るエネルギーを「衛気(えき)」と呼んでいます。衛気は身体の表面を保護し、病気にかかりにくいようにしています。特に気温の変化が大きい季節には肺が衛気を調整し、風邪や感染症から身を守っているのです。 - 潤いで防御機能を助ける
肺が体内の水分バランスを保ち、気道の粘膜を潤しています。潤いがあれば粘膜が乾燥せず、病原体が気道に付着しにくくなります。乾燥していると粘膜がひび割れて、病原体の侵入を許してしまうのです。
肺の不調で現れる症状

気の循環が滞ることで起こる不調
- 呼吸が浅くなる
気が不足すると呼吸が浅くなる
酸素が十分に体内に行き渡らないため疲れやすくなる - 血行不良
気の流れが滞ると血流も悪くなり、冷えや肩こりなどの症状が出やすくなる - 疲労感や倦怠感
全身のエネルギーが低下するため気力が湧かない
肌の乾燥や老化
肺の水分調整が滞ると、以下のような不調が現れることがあります。
- 乾燥による症状
肌荒れ・ドライスキン・口渇など - 呼吸器の乾燥
喉の渇き・乾いた咳 - 水分の滞留
むくみ・身体の冷え・重だるさ
免疫力の低下
肺の防御機能が弱まると、以下のような症状が現れることがあります。
- 風邪を引きやすくなる
外部からの病原体に抵抗できなくなり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる - 咳や痰が増える
異物が肺に入りやすくなり、咳や痰などの症状が出る - アレルギー症状の悪化
花粉やホコリなどのアレルゲンに敏感になり、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどのアレルギー症状が現れる
肺の不調を補うには

日常生活でできる肺ケアの方法をご紹介します。
乾燥対策
肺は乾燥に弱いので、秋からの季節には水分補給が大切になってきます。こまめに水分をとりましょう。ちょびちょび飲みがおすすめです。湿度が低い時期には加湿器を使うとよいですね。
肺を潤すとされる食材も積極的に食べましょう。
- 梨
肺を潤し咳や喉の乾燥を和らげる - きくらげ
食物繊維と水分が豊富に含まれる - 大根
呼吸器系をサポートし咳を緩和する - 山芋
滋養強壮作用があり肺の働きを強化する
規則正しい生活
規則正しい生活リズムは肺の健康にも必要です。十分な睡眠をとるよう心がけましょう。夜遅くまで起きている生活は、肺への負担を増やしてしまいますよ。
適度な運動は肺機能を向上させます。ウォーキングや軽いストレッチを習慣化し、身体全体の血行を促しましょう。血行がよくなると肺の働きも活発になり、気の流れもスムーズになります。
呼吸を意識する
肺の働きを活性化するための呼吸法はいろいろありますが、一般的に腹式呼吸が取り入れやすいですね。
- 楽な姿勢で座るか横になりリラックス
- 鼻からゆっくり息を吸いお腹を膨らませる
- 吸い切ったら口からゆっくり息を吐き出す(お腹をへこませるよう意識)
吸う息と吐く息の長さを同じにし、深くゆっくりした呼吸を繰り返します。肺をしっかり使うので酸素の吸収量が増え、気の循環がスムーズになりますよ。
リラックス効果も得られるので、日常に取り入れてみてくださいね。
乾燥の季節に向けて肺を潤しましょう

漢方では「肺・大腸・鼻」が密接に関係していると考えます。
肺は体内の水分調整をしていますが、大腸も余分な水分を排出して肺の働きを助けています。水分調節がうまくいかないと、便秘や下痢になりやすいですよね。
鼻は呼吸の入口として外からの気を体内に取り入れています。肺が弱ると鼻の機能も弱り、鼻づまりや鼻水などの症状が現れます。
肺は乾燥に弱いので、食材選びを工夫したり環境を整えたりして、潤いのある生活をしましょう。肌が乾燥しているときは肺も乾燥していると思ってください。肺をケアすると大腸や鼻にもよい影響を与えますよ。
肺のケアによいとされる漢方薬として、以下のものがあります。それぞれの症状に応じて使われます。
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
- 清肺湯(せいはいとう)
- 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
漢方薬は個々の体質や症状に合わせて選ぶのが大切です。ご自身に適した漢方薬は、専門の薬剤師にご相談のうえお選びくださいね。