
近年、体外受精による出生数は増加しており、生まれた子どもの9人にひとりに相当するそうです。しかし出生数は増加しているものの、妊娠率が横ばいであることをご存知でしょうか?
背景には、妊娠に成功するまでにかかる治療の回数や、年齢、社会的・経済的な要因があります。要因同士が絡み合い、問題を複雑にしているのです。
今日は、このような現象が起こる原因と、妊娠を目指すために今からできる「身体を整える方法」についてお話しします。体外受精を検討中の方や妊娠を望んでいる方に、少しでも参考になれば幸いです。
出生数は増えているのに妊娠率は横ばい

体外受精によって生まれた子どもの数が増えているのに、妊娠率は変わらない。背景にはいくつかの要因が絡んでいます。そのカラクリを説明しましょう。
出生数と妊娠率の違い
- 出生数
生まれてきた赤ちゃんの数 - 妊娠率
不妊治療を受けたひとの中で妊娠に成功した割合
不妊治療を受ける夫婦は増えています。2022年4月に、体外受精を含む不妊治療が公的保険の適用となりました。医療技術の進歩や社会の理解も深まり、以前より多くの人が体外受精を選択しています。
2022年のデータでは、体外受精を受けた人の増加に伴い、生まれた子どもの数も増加しています。
しかし全体としての妊娠率は横ばいのままなんですね。出生数が増えているのに妊娠率は変わらないといわれているのです。これは次のような理由によります。
年齢の影響
多くの夫婦が治療を受けているため全体の治療件数は増えますが、それが必ずしも妊娠率の上昇を意味するわけではありません。
体外受精を受ける年齢層は年々上昇しています。2022年に体外受精の治療を受けた女性の年齢で最も多かったのが42歳でした。保険適用となる年齢の上限が42歳だったことに関係するでしょう。もし制限がなければ、年齢が上のひとほど保険制度を利用すると思います。
高齢になるほど卵子や精子の質が低下し妊娠しにくくなります。治療を受ける人が増えても高齢のひとが多ければ、妊娠成功率は大きく上昇しないのです。年齢の要因は、妊娠率が上がらない大きな理由の一つです。
医療技術の進歩と結果の違い
母体の健康状態は妊娠に大きく影響します。治療全体の妊娠率が大幅に向上しないのは、患者の状況が多様であるためとも考えられます。
「不妊治療を受ける人が増え、出生数も増えている」一方で「妊娠率(成功率)は横ばい」という現状には、不妊治療を受ける年齢層の高齢化や、生殖能力の限界などが影響しているのです。
最近では、若年層でも生殖能力が落ちていると感じます。食生活や生活習慣の乱れが積み重なり、卵子の質が低下しているんですね。
このようなカラクリの背景には、医療技術の進歩と同時に、社会的・経済的な要因が密接に絡んでいるようです。
妊娠率が上がらない背景

不妊治療の増加や妊娠率が横ばいである背景には、いくつかの社会的および経済的な要因が深く関わっています。これらの要因を詳しく見ていきましょう。
晩婚化とキャリア重視
現代社会では、結婚や出産の時期が遅れる傾向にありますね。特に都市部では女性がキャリアを優先し、30代半ばやそれ以降に出産を考える傾向が強くなっています。しかし、年齢が高くなるほど妊娠の難易度が上がるため、妊娠率が伸び悩んでいるのです。
晩婚化や晩産化が進み、子どもを持ちたいと考えるカップルの年齢は上がっています。特に女性の年齢が35歳を超えると、自然妊娠や体外受精による妊娠の成功率が大きく低下します。
不妊治療の費用負担
体外受精を含む不妊治療には高額な費用がかかります。公的保険の適用や、一部の自治体・企業では支援策を設けているところもありますが、すべての希望者が十分な支援を受けられるわけではありません。
体外受精は1回あたりの治療費が数十万円。状態により追加の検査や治療が加わると百万円を超えることもあります。保険等の支援を利用できなければ全額自己負担です。しかも1回の治療で妊娠に成功するケースは少ないんですよ。
経済的理由で治療を継続できないカップルも多く、妊娠率の横ばいにつながっているのです。
ストレスとプレッシャー
不妊治療は心身への負担が大きく、精神的なストレスを伴います。仕事との両立を求められたり周囲からの強い期待を感じたりすると、プレッシャーになりますよね。治療がうまくいかないと自己評価を下げてしまい、落ち込むことも多いのです。
リラックスした状態を保つのが難しい現状も、妊娠を遠ざける一因になっています。
体外受精を成功させるため心身を整えましょう

体外受精を成功させるには、身体をトータルで整えることが基本になります。日常生活のなかで、血流を促しホルモンバランスを整える工夫をしましょう。
健康な身体が妊娠の基本
妊娠を目指すには、身体全体を健康に保つことが大切。特に体外受精などの高度な不妊治療を受ける際は、基礎的な体調が良好であればあるほど、治療が成功する可能性も高まります。
妊娠には、血流の改善が欠かせません。妊娠に必要な栄養や酸素は、血液を通じて体内に運ばれます。血行が良好であることは、子宮や卵巣の働きを助け、妊娠しやすい環境を整えるための大切な要素なんですね。冷え性や血行不良があると、卵巣や子宮の機能が十分に発揮されず、妊娠の妨げになることもありますよ。
ホルモンバランスの安定も妊娠にとって不可欠です。ホルモンは排卵のタイミングを調整する、受精卵が着床しやすいよう子宮内膜を整えるなど、妊娠のプロセス全体をコントロールしています。ホルモンバランスの崩れは、排卵のリズムが狂ったり、着床しにくくなったりする原因です。
生活習慣を整える
妊娠に向けた準備として、生活習慣を見直してみましょう。栄養バランスのよい食事をしていますか? 葉酸や鉄分、ビタミンDなどは妊娠をサポートする栄養素です。適度な運動は血行を促進し、質のよい睡眠をもたらしますよ。
ストレス管理も忘れずに行いましょう。ストレスや生活習慣の乱れはホルモンバランスが崩れる原因になります。心の健康は身体の健康にも直結するんですね。リラックスできる時間をもち、心身を健やかに保ちましょう。
漢方薬で身体を整える
体質改善や体内のバランスを整える手段として、漢方薬をおすすめしています。あなたの自然治癒力を高めるのが漢方の考え方です。
例えば、身体の冷えが原因で不妊に悩む方には、温める作用のある漢方薬を処方します。自律神経を整える漢方薬は、ホルモンバランスを整えるのにも役立ちますよ。
漢方薬は自然の成分から作られており、身体にやさしく作用します。冷え性や血行不良、ホルモンバランスの乱れなど、妊娠を妨げているものを改善していきましょう。
漢方薬はひとりひとりの体質に合わせた処方が必要ですので、専門の薬剤師に相談してくださいね。
妊娠出産のタイムリミットに気づいて!

体外受精を考える方が増え、出生数が上昇しているのに妊娠率は大きく変わらない。背景には年齢や社会的・経済的な要因があります。
社会的・経済的要因として考えられるのは
- 晩婚化
- キャリア優先による出産年齢の上昇
- 経済的負担の大きさ
- 仕事と治療の両立の難しさ
- 精神的プレッシャー
- 地域格差
- 不妊治療に対する支援の不十分さ
などが挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合い、治療を受ける人が増えても妊娠率が劇的に上がらない理由となっているのです。
総合して考えると、単に医療技術の進歩だけでは解決できない、複合的な問題が見えてきますね。結婚・出産・キャリアの積み上げなどの時期をどうするかは個人の自由です。現代は生きる選択肢がたくさんありますし、なにが幸せなのかはひとそれぞれ違いますよね。
しかし妊娠出産にはタイムリミットがあり、その期間は案外短いのです。年齢が原因で不妊に悩む方をたくさん見てきたので、気づきをお届けできればと思い書いています。頭の片隅に置いていただき、ときどき思い出してくだされば嬉しいですね。
そのほか自主的にできることで大切なのは、心身を整えることです。せっかく高度な治療を選択しても、身体が受け入れられない状態であれば妊娠は成立しません。生活習慣の改善や漢方薬を活用し、妊娠に向けた準備を進めてくださいね。
焦りや不安が湧きあがることもあるかもしれません。体質改善や妊娠準備に関してお悩みの方は、ぜひご相談ください。妊娠への一歩を踏み出しましょう。