
「新生活が始まってから疲れが抜けない」
「ゴールデンウィーク明けは気が重い」
漢方相談でよくお聞きする声です。
「五月病」と呼ばれる状態でも、背景はそれぞれ。身体のバランスがどう乱れているかで不調の現れかたが違いますが、同じ症状でも原因が違えば対処法も違ってきます。
自分のタイプを知るところから始めてみましょう。
五月病はバランスの乱れで起こる不調

五月病という言葉は広く知られていますが、正式な病名ではありません。新しい生活の緊張が続いたあとに、心身のバランスが崩れる状態を示す言葉としてよく使われます。
ストレスがたまりやすい季節
4月は新しい生活や仕事で緊張感が続きます。特に新入生や新入社員は環境の変化に適応するため、心身の疲労が激しいでしょう。
ゴールデンウィークで気持ちが緩むと心身のバランスが崩れ、疲れが表面に出やすくなります。「なんとなく身体が重い」「元の環境に戻りたくない」と感じるのは、自然な反応なのです。
気・血・腎のバランスで考える
五月病では「気・血・腎」のバランスが関係すると考えます。それぞれの働きを簡単にみてみましょう。
- 気(き)
「気」は生命エネルギーとされています。五月病は気滞(きたい|気の流れが滞る)や気虚(ききょ|エネルギー不足でやる気が出ない)の状態。ストレスや環境の変化で引き起こされます。 - 血(けつ)
血虚(けっきょ|血の不足)や瘀血(おけつ|血の流れが悪い)の状態は、不安やイライラと関連しています。春は肝(かん)の季節。気温や環境の変化・ストレスなどが重なると肝の働きが乱れ、血の巡りにも影響します。 - 腎(じん)
腎は回復力や生命力の土台。腎の機能が低下する(腎虚|じんきょ)と、全体的なエネルギーのバランスが崩れてしまいます。
これらのバランスが崩れると、疲れ・不安・だるさなどの不調が現れやすくなります。
同じ不調でも原因はさまざま
症状が似ていても、身体の状態はひとによって違います。「疲れやすい」という症状でも、エネルギー不足なのか、回復力が低下しているのかでは対処の仕方が変わってくるのです。
要因が絡み合って症状が出る場合もあります。メンタルの不調・自律神経の乱れ・不定愁訴(病名がつかない不調)などは、複数の要因によって引き起こされることが多いんですね。
チェックリストで知る五月病のタイプ

漢方相談で身体の状態を伺っていくと、いくつかのタイプに分けて考えられる場合があります。簡単なチェックで傾向を知りましょう。
気虚(ききょ)・気滞(きたい)タイプ
〈症状〉疲れやすい・やる気が出ない
- 朝から身体が重い
- 少し動くだけで疲れる
- やる気が出ない
- ひとと会うとぐったりする
- 食欲がわかない
- ため息が多い
- お腹が張ることがある
〈チェックが3つ以上の場合〉
エネルギー不足や気の巡りが悪いかもしれません。4月の緊張が続いたあと疲れが出やすいタイプです。頑張り屋さんによくみられます。
血虚(けっきょ)・瘀血(おけつ)タイプ
〈症状〉不安・眠りが浅い
- 寝つきが悪い
- 夢をよく見る
- 不安やイライラを感じやすい
- 肩こりや頭の重さを感じる
- 顔色がすぐれない
- 手足が冷えやすい
- 目の疲れを感じる
〈チェックが3つ以上の場合〉
血の不足や巡りの乱れが関係している可能性があります。環境の変化に敏感なひとにみられることがあります。
腎虚(じんきょ)タイプ
〈症状〉回復しにくい・だるさが続く
- 休んでも疲れが抜けない
- 夕方になると強いだるさ
- 気力が出ない
- 身体の重さが続く
- 腰が重く感じる
- 足がむくみやすい
- 朝すっきり起きられない
〈チェックが3つ以上の場合〉
身体の回復力が低下しているかもしれません。忙しい生活が続いたあとに感じやすい症状です。
タイプ別の整えかたのヒント

タイプがわかったら、整えかたをみていきましょう。意識を少し変えるだけでも身体の負担は軽くなります。
【気虚・気滞タイプ】
休養とエネルギー補給を意識するのが大切です。食事や生活リズムを整えましょう。
〈栄養バランスのよい食事〉消化を助ける食材(かぶ・キャベツ・大根・白菜など)や、気を補う食材(鶏肉・牛肉・豆類など)をとる。冷たいものは避け、温かい食事を。
〈十分な休息〉疲れたら無理せず、休息優先の生活を。睡眠の質を高めるのが大切。
〈軽い運動〉軽い散歩やストレッチは気の巡りを促す。太陽の光を浴びながら身体を動かすのがおすすめ。
〈ストレス管理〉深呼吸やストレッチをまめに行い、リラックスできる時間を持つ。好きな音楽を聴くなど趣味も大切に。
〈香りを取り入れる〉ラベンダーや柑橘系の香りは心をリラックスさせ、気の流れを改善する助けになる。
【血虚・瘀血タイプ】
緊張が続くと眠りの質が下がりやすくなります。夜はゆっくりする時間をもち、心身を落ち着かせる習慣を意識してみましょう。
〈血を補う食材〉黒い食材(黒豆・黒ゴマ・海藻など)や、赤い食材(ビーツ・トマト・赤ピーマンなど)を積極的にとる。鶏肉・牛肉・魚介類(特にいわしやうなぎ)などは鉄分やビタミンB群を豊富に含む。
〈十分な休息と睡眠〉夜ふかしを避け、規則正しい生活リズムを心がける。
〈ストレス管理〉趣味に没頭したりアロマテラピーを利用したりするなど、心が落ち着く時間を過ごす。
〈血行を促進する運動〉ウォーキングやストレッチなど、骨盤周りの血行を促す運動がおすすめ。
〈入浴〉ぬるめのお湯にゆっくり浸かる。マッサージをしながら入るとより血行が促される。
【腎虚タイプ】
疲れが続くときは回復力が落ちているかもしれません。生活リズムを整え、身体をいたわる時間を大切にしましょう。
〈休息と睡眠〉質のよい睡眠が不可欠。早めに就寝し、十分な休養を。
〈身体を冷やさない〉冷たい飲食物を避け、温かい食事を。生姜やニンニクをプラスすると効果的。湯船に浸かる習慣を。
〈腎を養う食材〉黒豆・黒ごま・山芋・くるみ・鶏肉・豚肉など、栄養バランスを考えて取り入れる。
〈軽い運動〉激しい運動は避ける。散歩やストレッチなど軽い運動は、体力を維持しつつ腎の機能をサポートする。
五月病は誰にでも起こりうる自然な反応

4月は新しい環境に慣れようと、多くのひとが頑張っています。五月病はストレスが蓄積し心身が影響を受ける一時的な状態で、身体からの自然なサインといえるでしょう。
五月病の症状を軽減するには自己ケアが重要ですが、無理に元気を出そうとしなくても大丈夫。不調は怠けでも甘えでもありません。健康を保つために身体がSOSを出しているのですから、少しずつ整えていけばいいのです。
期待に応えようとしなくていいし、他人の評価を気にしなくていいし、すべて自分ひとりでやらなくていい。
「そんないい加減なことはできないよ」と思うかもしれませんが、わたしはあなたにとっての「いい加減」を探ってもらいたいと思います。仕事も生活も心身も「いい塩梅」が必ずあるはずですから。
ゆっくり休んでも不調が続くときは、ぜひ相談にいらしてくださいね。




