
朝から身体が重く、1日を終えるころにはぐったり。休みの日は休養で終わってしまう。健康診断の結果は問題ないのに……。
当店でよくお受けするご相談です。
体調がよくないのは確かなのに数値に現れないのはなぜでしょう。原因がわからず不安になりますね。気持ちが弱いのかと自分を責めてしまう方もいます。
本記事では、数値では見えにくい身体の状態にも目を向けてみます。背景にどのような問題が隠れているのでしょうか。
数値だけでは見えない身体の状態

健康診断は大切な目安。血液検査や各種の数値から身体の状態が見えてきます。しかし数値が正常でも不調を感じる方は少なくありません。
健康診断は病気の有無を見る検査
健康診断の主な目的は病気の早期発見。定期的に受けて健康管理に役立てるものです。血糖値・コレステロール・肝機能などの数値から病気のリスクを調べ、異常がなければ「問題なし」と判定されます。
しかし、検査で異常がなくても身体の回復力が落ちている場合があります。身体が重だるかったり体力が1日持たないなどのご相談は、とても多いのです。健康診断の数値と元気に動けるかどうかは、異なる視点の健康評価なんですね。総合的に考慮するのが大切です。
脾の働きが弱まった状態「脾虚」
食べものからエネルギーを作る働きは脾(ひ)が担っており、脾の働きが弱くなる状態を脾虚(ひきょ)と呼びます。次のような症状はありませんか。
- 食後に眠くなる
- 胃腸が弱い
- 疲れやすい
- 甘い物が欲しくなる
エネルギーを作る力が弱くなるため、疲労感が続きやすくなるのです。
「気虚」は元気が不足した状態
身体を動かす力は気(き)です。気は生命エネルギーのような存在。エネルギーが不足した状態は気虚(ききょ)です。
気虚には次のような特徴があります。
- 疲れやすい
- 息切れしやすい
- 声に力が出ない
- 風邪をひきやすい
元気の土台が弱くなった状態といえるでしょう。
数値が正常でも疲れやすい原因は?

疲れやすさには、それぞれのひとが持つ背景があります。健康診断ではわかりにくい要因が重なっているケースも多くみられます。
栄養不足|エネルギーが足りない
健康診断で異常がなくても、栄養バランスの偏りが原因で疲れやすくなっていることがあります。
例えば中性脂肪が低すぎる場合は、エネルギー不足かもしれません。中性脂肪の数値に関しては、高すぎることばかりに注目する傾向があります。中性脂肪が低くても健康診断で指摘されることが少なく、リスクが見過ごされがちなんですね。
鉄分不足にも注意が必要です。鉄は体内で酸素を運んでいますが、不足すると行き渡りにくくなり、だるさや疲労感につながります。
自律神経の乱れ|休んでも回復しない
自律神経は身体の回復を支えています。自律神経は交感神経と副交感神経のふたつから成り立っており、バランスよく働くことで身体の機能が調整されています。
現代では自律神経が乱れる要因がとても多いんですね。ストレス・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れ・環境の変化・身体的ストレスなど、さまざまな要因が複合的に影響し合い、自律神経のバランスが保ちにくくなっています。
自律神経の乱れが続くと心身の不調や睡眠障害を招き、回復力が落ちるのです。
筋肉量の低下|体力が落ちると疲れやすい
筋肉は身体を動かすためのエンジン。筋肉量が少ないひとは、筋肉量が十分なひとに比べて身体に負荷がかかりやすくなります。同じ日常の動作でもエネルギーをたくさん消費してしまうんですね。
筋肉が衰えると運動意欲が低下し、さらに筋力量が減少するという悪循環にも陥りやすいのです。活動量の低下は体力の低下につながります。
筋肉量の低下は、疲労感を増す原因です。筋肉が少ないと血流が悪くなったり基礎代謝が落ちたりして、エネルギー不足の元になってしまうのです。
身体の土台を整え元気に過ごす

日常を軽やかに過ごしたいと、多くのひとが願っています。身体の土台を整えるため、生活を見直しましょう。
身体は食べものでできている
東洋医学では、脾は食べ物から気を作ると考えます。脾は消化器系の中心的な役割を果たし、食べものを消化吸収して気や血を生成するのです。
脾は吸収した栄養を必要な部分に運んで、身体全体の健康を保とうとしています。生活習慣を見直し、脾の働きを守りましょう。摂取する食べものも大切ですが、食べかたもとても大切です。
脾をサポートする食事法
- 規則正しい食生活
毎日同じ時刻に食事をとる。朝食は脾の働きを活発にするため欠かせない - 温かい食事
脾は冷えに弱いため、冷たい飲食物はなるべく避ける - 腹八分目
食べ過ぎは脾に負担をかける。少し物足りないと感じるくらいで止める - ストレス管理
ストレスは脾の機能に影響を与える。心身のバランスを保つ生活を
健脾食材
健脾(けんぴ)食材とは、脾の働きを助け、胃腸を健やかに保つ効果がある食べもののことです。かぼちゃ・さつまいも・山芋・大豆・いんげん豆・ハトムギなどが代表的です。
健脾食材を蒸したり煮込み料理などにすると、消化がよくなります。生姜やネギをプラスすると風味が加わり、身体も温まりますよ。
身体を動かして回復力を上げる
アクティブレストという考えかたがあります。日本語で「積極的休養」と呼ばれ、疲労時に身体を完全に休ませるのではなく、軽い運動やストレッチを通じて疲労回復を図る休息方法です。
身体を動かすと血行が促進され、老廃物の排出がスムーズになります。リフレッシュして精神的な疲れをやわらげたり、脳疲労の回復にもよいとされているんですね。
週に数回、ウォーキングやストレッチを取り入れるとよいでしょう。快適と思える程度の運動は身体に負担が少なく、継続しやすいものです。
未病セルフチェック
疲れやすさは身体からのサインかもしれません。東洋医学では、病気ではないものの身体のバランスが崩れ始めた状態を未病(みびょう)と呼んでいます。心身に何らかの異常を感じているのに検査で異常が見つからない場合は、未病といえるでしょう。
未病は将来的に病気に発展する可能性があるため、注意が必要です。次のチェックリストは身体の状態を見直す目安です。当てはまる項目がいくつあるか確認してみましょう。
疲れやすさの未病チェックリスト
□朝起きたときから身体が重い
□夕方になるとぐったりする
□休日は休養で終わることが多い
□食後に強い眠気が出る
□胃腸が弱いと感じる
□甘い物や炭水化物が欲しくなる
□少し動いただけで息が切れる
□風邪をひきやすい
□冷えを感じやすい
□寝ても疲れが抜けない
【当てはまる数の目安】
〈0〜2個〉身体のバランスは比較的安定している状態です。生活リズムを整える意識を持ち続けましょう。
〈3〜5個〉身体の疲れがたまり始めている可能性があります。生活習慣を見直すタイミングかもしれません。
〈6個以上〉身体の回復力が落ちている可能性があります。無理を続けず、身体をいたわる時間を持ちましょう。
未病の段階で身体を整える視点は、東洋医学の大きな特徴です。疲れやすさが続くなら、心身の状態を見直してほしいと思います。
未病を見逃さず身体を整えましょう

健康診断の数値が正常でも、不調を感じて相談に来られる方が増えています。数値に現れない不調は、周囲に理解されにくいものですね。それでもつらさを感じるなら、無理を続けないでほしいと思います。疲れやすさは身体からのSOSかもしれません。
東洋医学では、未病の段階に注目しています。大きな病気にならないうちに身体の土台を整えましょう。疲れやすさの背景には、脾虚や気虚などさまざまな身体の状態があります。生活習慣を見直すとともに、漢方薬の使用を検討する場合もあります。
〈よく使われる漢方薬〉
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):元気が出にくく疲れやすい体質の方に選ばれることが多い
- 六君子湯(りっくんしとう):胃腸の働きが弱く食後に眠くなるなどの状態に用いられる
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):体力が落ちて疲れが長引く場合に検討される
漢方薬は体質や症状に合わせてお選びします。必ず薬剤師にご相談くださいね。




