
「食欲が止まらないんです」というご相談を受けることがあります。食事をしたばかりなのに甘いものが欲しくなったり、お腹がいっぱいなのに食べものを探してしまう……なんてことはありませんか?
満足感は食事量だけで得られるものではありません。脳の働き・ストレス・胃腸の元気具合など、さまざまな要素が関係するのです。
東洋医学ではさらに、胃腸の吸収力や「気」の状態にも注目します。食べても満足できないとき、身体でなにが起きているのでしょうか。
食べても満足できない状態とは? 満腹=満足ではない

お腹がいっぱいになれば満足すると考えるかもしれませんが、満腹と満足は同じではありません。満足感には脳の働きや身体の吸収力が関係しています。
満腹なのに「まだ食べたい」と感じる不思議
食事のあと、ついお菓子の袋を開けてしまった経験はありませんか。満腹なのに満足しないのは、身体的な満腹感と心理的な満足感にギャップがあるからです。
〈満腹感〉胃が膨らんでいることや血糖値の上昇により感じられる生理的な感覚
〈満足感〉心理的な要素が強く、食事の質・食べかた・感情の状態に影響されやすい
満腹なのに満足できない状態は、身体的な要因と心理的な要因が複雑に絡み合っているのです。
脳が満足を感じるまでには時間がかかる
脳には満腹を感じる仕組みがあるのですが、食事の進行具合とはタイムラグがあります。
一般的に、満腹の信号が脳に届くまでには約15〜20分かかるといわれています。食べものが入ってきたことや血糖値上昇などの情報を胃がキャッチしたあと、脳に信号が送られるからなのです。
早食いすると脳が満足を感じる前に食べ終わってしまうので、まだ食べたい感覚が残るんですね。
吸収の力に注目
食べたものは胃腸で消化され、栄養は血となり、身体を養います。栄養が身体に届くと、自然に満たされた感覚が生まれるのです。
胃腸に元気がなくなると吸収の力が弱くなってしまいます。東洋医学ではこの状態を気虚(ききょ|体内の気が不足している状態)と呼びます。胃腸は気を生成する場所とされていて、胃腸の健康が直接「気」に影響するのです。
食べても満足感が続かないときは、胃腸に元気がなくなっているのかもしれません。
食べ足りなく感じるのはなぜ?

食欲はとても繊細な仕組みです。心の状態・脳の働き・胃腸の元気などが互いに影響し合っています。
ストレスが食欲に影響する
仕事や人間関係の緊張、家事や育児の疲れなど、ひとはストレスを抱えながら生きています。ストレス状態が長く続くと、食べる時間に安心を求めるようになるのです。
空腹ではないのに食べてしまう状態を、心理学ではエモーショナル・イーティング(感情的摂食)と呼びます。食べることは瞬間的な快感や満足感をもたらすので、不安などの感情を紛らわすために食べてしまうんですね。甘いものや高カロリーのものを好む傾向があります。
脳の満足センサーが鈍くなる
甘い物や脂っこい食事が続くと、脳の満足センサーが鈍くなると考えられています。食べても満足できず、さらに食べたくなる感覚につながりやすいのです。
甘いものを食べると「あ〜、幸せ!」と感じるひとは多いでしょう。脳内でドーパミンという神経伝達物質が分泌され、快感や満足感をもたらしているんですね。快感が食べものへの欲求を強め、また同じ食べものを求めてしまうのです。
栄養バランスの偏り
栄養バランスが偏っていると満足感を得られないことがあります。糖質や脂質が多くたんぱく質や食物繊維が少ない食事は満腹感を得られやすいですが、血糖値が急降下すると再び空腹を感じやすくなるのです。
他にもホルモンの影響や環境要因など、複雑な要素が重なっている場合もあります。
胃腸と心を整える生活

満足感を取り戻すためには、心身のバランスを整えるのがとても大切。食べかたを見直し、胃腸の健康を保ち、心の緊張を緩和するのが不可欠です。3つの要素を詳しくみていきましょう。
満足感を生む食べかた
食事に集中し、五感を働かせましょう。食べものの味・香り・食感を意識していると、安心感が生まれてきます。食事を急いで済ませたり、スマートフォンやテレビに気を取られながら食べていると、不安やイライラが生じることがあるのです。
食事中、他のことに気を取られると、食事体験した自覚が薄くなってしまいます。脳が食べた味や量を認識しにくくなるんですね。ゆっくり噛んで食べると消化が促進され、満腹の信号が脳に届きやすくなります。
胃腸を守る生活リズム
胃腸は食べものを消化し栄養を吸収するため、常に働いています。食べ過ぎや不規則な食事が続くと胃腸は休むひまがなくなり、疲れてしまうのです。胃腸を休ませるため、食べかたを意識しましょう。
食事と食事の間は2〜4時間程度あけるのが望ましく、夕食は就寝の3時間前までに済ませるのが理想です。胃腸に優しい食事を心がけましょう。脂肪分が少ない食材(ささみ・白身魚など)を選び、野菜も柔らかく煮ると、消化の負担を減らせます。
プチファスティングを実践して、消化器官を休ませるのもよいですね。休日を利用すると初心者にも取り組みやすく、おすすめです。
ストレスと食欲の関係を知る
食欲は心の状態と深く関係します。緊張が続いたり疲れが溜まっていたりすると、身体はエネルギーを求め、食欲が増しやすくなります。
定期的に身体を動かしましょう。軽い運動でも掃除でも構いません。運動はストレスを軽減し、気分を改善する効果があります。満腹感を感じやすくするホルモン分泌を促進する役割もあり、食欲のリズムが整いやすくなるといわれています。
もし食べ過ぎてしまっても、自分を許すのがとても大切です。翌日からまたスタートすればよいだけなので、自分を責めるのはやめましょう。「こんな日もある」と思って、ストレスをためない練習をしてくださいね。
食欲の悩みは身体からのサインかもしれません

食欲は、意志だけで動いているわけではありません。胃腸の元気・生活の疲れ・心の緊張など、身体のさまざまな状態が影響しています。
「まだ食べたい」と感じるとき、身体は何かを伝えようとしているのかもしれません。
栄養が足りないのかもしれない。
疲れが溜まっているのかもしれない。
気持ちを休ませてほしいのかもしれない。
立ち止まって、心身と向き合えるといいですね。身体の声に耳を傾けるだけで、食欲とのつきあいかたが変わることもありますよ。
食欲でお悩みのかたはご相談ください。お話しをうかがいながら、身体の状態を一緒に整理していきましょう。




