
歯周病は歯ぐきの病気と思われがちですが、近年では全身の健康との関係も研究されています。
慢性腎臓病(CKD)の方は歯周病が起こりやすい傾向があり、逆に歯周病の炎症が腎機能に影響する可能性も指摘されているのです。
口内の炎症が、なぜ腎臓と関係するのでしょうか。歯周病と腎臓の関係について、研究でわかってきていることを紹介します。
歯周病は歯ぐきに炎症が起こる状態

歯ぐきの細菌感染で炎症が起こる
歯周病は、歯ぐきや歯槽骨(しそうこつ|歯を支える骨)に炎症が起こる感染症です。歯と歯ぐきの境目にたまったプラーク(歯垢)に含まれる細菌によって引き起こされます。
最初は歯ぐきが腫れたり出血したりする「歯肉炎」の状態から始まります。初期段階では痛みや明確な自覚症状がありません。気づかないうちに進行することも多く「沈黙の病」とも呼ばれているのです。
慢性的な炎症になりやすい
歯周病の特徴のひとつは、炎症が長く続く傾向があること。歯周病菌に対して身体が適切に反応できないと、炎症が長引いてしまいます。
炎症が慢性化すると、歯を支えている骨にも影響が及びます。進行すると歯槽骨が溶けてしまう「歯周炎」となり、最終的には歯が抜ける可能性もあるのです。
そのため歯周病は単なる口のトラブルではなく、慢性炎症のひとつとして考えられることがあります。
全身の健康との関連
近年、歯周病と全身の健康との関連が研究されています。
歯周病による慢性炎症は、血流を介して全身に広がります。炎症物質が血液中に放出され、他の臓器にも影響を及ぼすのです。心疾患・糖尿病・脳卒中など全身疾患との関連が報告されており、そのひとつとして腎臓との関連も研究されています。
歯周病は口腔内の問題にとどまらず、全身の健康に深く関わっているのです。
歯周病と腎臓の関係

慢性腎臓病のひとは歯周病が起こりやすい傾向
研究では、慢性腎臓病(CKD)の患者は、健康なひとに比べて歯周病が進行しやすい傾向があると報告されています。CKD患者の75〜90%に歯周病が見られるという研究結果があり、高い罹患率を示していますね。
腎機能が低下すると免疫の働きや身体の回復力が弱くなり、感染や炎症が起こりやすくなります。CKD患者は免疫機能が低下しているため感染症にかかりやすく、また重症化しやすい傾向があるのです。
透析を受けている患者は、栄養不足・尿毒素の蓄積・糖尿病の合併などにより、さらに免疫機能が低下していると考えられます。
歯周病の炎症が腎機能に影響する可能性
歯周病は腎機能に影響を与える可能性があります。
歯周病は慢性的な炎症が続きやすい病気です。炎症によって生じる物質が血液を通じて全身に広がり、腎臓の働きに影響すると考えられているんですね。
歯周病の炎症が強いほど腎機能の低下との関連が見られたという報告もあります。
歯周病と腎臓病が相互に影響する
歯周病と腎臓病は一方向の関係ではなく、互いに影響し合うと考えられています。先に述べたように、腎機能が低下すると歯周病が悪化しやすくなり、歯周病の炎症が腎臓に負担をかけることがあるからです。
以上のような理由から、口腔ケアは全身の健康を守るうえでも大切な習慣のひとつといえるでしょう。
腎臓を守るための口腔ケア

毎日の歯みがきをていねいに
歯周病予防の基本は、プラークをためないこと。1日2回、朝晩の歯みがきがとても大切です。
歯と歯ぐきの境目を意識して、ていねいに行ってください。歯ぐきの状態に合わせて、やわらかめの歯ブラシやフッ素入りの歯みがき粉を選ぶのもよいですね。
歯間ブラシやデンタルフロスを使うと、歯ブラシだけでは落としにくい汚れも取り除きやすくなります。口腔内を清潔に保ち、歯周病予防につなげましょう。
定期的な歯科検診
歯周病は自覚症状が少ないため、気づいたときには進行していることがあります。定期的に歯科検診を受けましょう。
一般的に3〜6か月に1回が推奨されています。この間隔は口腔内の細菌増殖サイクルに基づいており、歯科医院でのクリーニング後、約3ヶ月で細菌が再び増殖することが研究で示されているのです。
歯周病や虫歯のリスクが高いひとは、もう少し短いサイクルで検診を受けるといいですね。病気の進行に気づきやすくなり、問題がみつかっても早期に対処できます。
全身の健康管理を意識する
歯周病は生活習慣や身体の状態とも関係しています。毎日の生活を整えることも、口腔環境を守るうえで大切です。
- 食生活:糖分の多い食べものや酸性の飲食物をとる機会が多いと、口腔内の環境が乱れやすくなります。栄養バランスのとれた食事を意識しましょう。
- 喫煙:たばこは歯ぐきの血流を悪化させ、免疫機能を低下させることがあります。歯周病が進行しやすくなるといわれています。
- ストレス:ストレスや体調不良が続くと身体の免疫機能が低下し、炎症が起こりやすくなります。
糖尿病などの慢性疾患・肥満・免疫機能の低下なども歯周病との関連が指摘されています。口腔ケアだけでなく、生活習慣を整えるのも歯ぐきの健康を守るポイントです。
歯ぐきの健康は腎臓の健康にも関係します

歯周病は「口のなかの病気」として切り離して考えがちですが、慢性的な炎症が全身に影響する可能性があります。腎臓との関連も指摘されており、口腔ケアは全身の健康を考えるうえでも大切だと考えられています。
腎機能の低下が気になっている方は、日々の歯みがきと定期的な歯科検診を意識してみてください。わたしも、口腔ケアや生活習慣を整えることの大切さをあらためて感じました。
漢方薬を服用する場合でも「薬を飲んでいるから大丈夫」ではありません。食事・睡眠・口腔ケアなど生活習慣を整えながら、必要に応じて漢方薬を取り入れるのが大切なんですね。
今回は歯周病と腎機能についてのお話でした。不安や疑問がある方はどうぞご相談くださいね。





