日本の水道水は厳格な基準と管理体制が整っており、世界的にみても非常に安全です。

しかし近年、水道水に含まれるPFAS(ピーファス)という化学物質が注目されるようになりました。一部の地域では基準値を超えるPFASが検出されたこともあり、政府は調査と対策を進めています。

安心して水道水を利用するため、わたしたちができることはなんでしょうか? 現時点でわかっていることと、妊活中の方ができる対策をご紹介します。

PFASとは? 妊活中に知っておきたい最新情報

環境中に残り続ける「永遠の化学物質」

PFASは「ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の総称で、1940年代から使われ始めた人工的な化学物質です。フライパンの表面加工や防水製品、消火剤など、さまざまな製品に使われてきました。

PFASは、自然界でほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも呼ばれています。現在4,700種類以上のPFASが存在し、なかでもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は健康への影響(発がん性や免疫系など)が懸念されているのです。

妊活・妊娠と水道水のPFAS

PFASと妊活・妊娠の関係については、まだ研究が進行中の段階です。現時点では、いくつかの研究で次のような可能性が指摘されています。

  • 女性の生殖ホルモンへの影響の関連性
  • PFAS濃度と妊娠までの期間の関連性
  • 胎児の発育への影響の可能性

これらの研究結果はまだ限定的であり、因果関係が完全に証明されたわけではありません。

日本の基準値と今後の動向

日本では、水道水中のPFOSとPFOAの合計値について、1リットルあたり50ナノグラム(ng)以下という暫定目標値が設定されています。この基準は今後さらに厳しくなる可能性もあるんですね。

過去の全国調査では、一部の地域で暫定目標値を超えるPFASが検出された事例もありました。しかし最新のデータではすべての検査地点で目標値を下回っているそうです。引き続き、PFASの検査と監視が重要になるでしょう。

お住まいの地域の水質に関する情報は、地方自治体のホームページなどで確認できる場合があります。

妊活中にできる3つの心がけ

水道水との賢いつきあいかた

PFASは煮沸では分解されないため、お湯を沸かしただけでは除去できません。妊活中の方には水の使い分けをおすすめします。

  • 飲み水には浄水器を通した水やミネラルウォーターを
  • 調理に使う水も可能であれば浄水器からの水を使用する
  • シャワーや入浴については問題ないとされている

皮膚からのPFAS吸収は、飲み水に比べて少ないとされているんですね。

浄水器を選ぶ際は、PFASの除去に効果的とされる活性炭フィルターや逆浸透膜(RO膜)を使用した製品が考えられます。製品によって性能が異なりますので、違いを理解し、信頼できる情報をもとに選びましょう。

妊活中の水分補給|良質な水の選びかた

漢方的な観点では、身体を冷やさない水分補給が大切です。

  • 常温か少しあたたかめの水を選ぶ
  • 季節に合わせた薬膳茶を取り入れる(例:冬は生姜入り、夏は菊花茶など)
  • 白湯(さゆ)を一日の始まりに飲む習慣をつける

これらは漢方的に気血水のバランスを整え、身体の巡りをよくするとされています。

適切な対策で心配を減らそう

PFASに関する情報から、不安になるかもしれませんね。過度な心配はかえってストレスとなり、妊活によくありません。

心配は情報不足からくることが多いものです。正確な情報をもとに冷静に状況を把握し、必要な行動を取りましょう。

  • 現時点でできる対策を無理なく取り入れる
  • 完璧を求めすぎない
  • 水だけでなく食事・睡眠・運動など総合的に健康に配慮する

完全にPFASを避けることは難しいですが、できることから少しずつ取り入れていきましょう。

漢方的な考えで整える妊活中の身体づくり

現代環境と妊活中の身体バランス

漢方医学では「解毒」という考え方があります。現代医学の「有害物質の排出」とは少し異なり「身体全体のバランスを整えることで本来の機能を高める」という意味合いが強いものなんですね。

PFASについては科学的な排出方法が確立されていないため、ここでは一般的に身体によいとされている、自分でできることをご紹介しましょう。

漢方医学では、外部からの影響に対して身体が本来持つ正気(せいき)という防御力で対抗すると考えます。妊活中は正気を高め、身体の巡りをよくすることが大切です。

現代の環境に含まれるさまざまな物質に対しても、身体全体のバランスを整えることで対応していきます。

五感で整える身体バランス

漢方では、五感を通じて身体のバランスを整えることも大切にしています。妊活中の方が日常に取り入れやすい、五感別のアプローチです。心と身体を緩めましょう。

目(視覚)を通じて

  • 緑豊かな自然の中で過ごす時間をつくる
  • 心地よい色彩に囲まれた空間で過ごす
  • 夜間はブルーライトを控える

耳(聴覚)を通じて

  • リラックスできる音楽を聴く
  • 自然の音に耳を傾ける
  • 雑音の少ない環境で質のよい睡眠を

鼻(嗅覚)を通じて

  • アロマテラピーで気分を整える
  • 新鮮な空気を取り入れる
  • 季節の香りを楽しむ

舌(味覚)を通じて

  • 五味(甘・酸・苦・辛・塩)をバランスよく
  • 旬の食材を味わう
  • 自然な甘みのものを選ぶ

皮膚(触覚)を通じて

  • 湯船につかって身体を温める
  • 天然素材の衣類を身につける
  • 軽いマッサージで血行を促進する

不安な時代だからこそ大切にしたい自然な身体作り

水道水に含まれるPFASについてはまだわからないことも多く、研究が進行中です。今できることをひとつずつ取り入れていくことが大切かもしれません。

妊活中はさまざまな情報に敏感になりがちですが、過度なストレスを抱えるのは心身によくありません。「無理ない範囲の対応ができていればよい」と気持ちを切り替えましょう。

身体のバランスを整えながら、妊娠力を高めていくためにお手伝いいたします。PFASなど環境の影響が気になる方も、ぜひ一度ご相談ください。不安をひとりで抱え込まないようにしてくださいね。

※この記事の内容は2025年4月現在の情報に基づいています。