
春になると感じるふわっとしためまい。検査を受けても大きな異常は見つからないことが多いのですが、原因がわからないままだと落ち着きませんね。
春のめまいは突然起きる不調というより、季節の変化に身体の準備が追いつかないときに現れやすい反応です。春という季節の特徴から、身体のなかで何が起きているのかを整理してみましょう。
春のめまい=身体の指令が一気に増えた状態

春は、気温も生活も気持ちも同時に動き出す季節。身体のなかでは、調整役が急に忙しくなる時期です。
春は「同時進行」が増える季節
春先は、1日の寒暖差が5〜10度以上になる日も珍しくありません。冬至から比べると日照時間も約2時間以上長くなり、自然に活動量が増えていきます。
引っ越しで新生活が始まったり、年度替わりで仕事内容が変わったりと、生活リズムや人間関係が新しくなるひとも多いでしょう。
身体は本来、変化に合わせて少しずつ調整したがっています。急な変化が起こっても頑張ってくれるのですが、調整がうまくいかないことがあるんですね。
めまいは回転性だけではない
めまいというと、ぐるぐる回る「回転性」の感覚を思い浮かべるのではないでしょうか。春に多いのはふわっと浮くような感覚や、足元が定まらない感じで「浮動性」のめまいです。立ち上がるときに一瞬不安定になる状態も含まれます。はっきりした回転がないため異常と判断されにくいんですね。
浮動性めまいが長引く場合や、他の症状(頭痛・意識障害・嘔吐など)を伴う場合は、病気が隠れていることもあります。早めに受診しましょう。
一時的な不安定さとして現れやすい
春のめまいには、ずっと続くというより、出たり引っ込んだりする特徴があります。
- 朝は調子よかったのに午後になるとふわっとする
- 外出中は気にならなかったのに家に帰ってから不安定になる
- 立ち上がるときや向きを変えた瞬間にふらつきを感じる
時間帯や状況によって感じかたが変わりやすいのです。日によって調子の良し悪しが変わるのも、春のめまいの特徴といえるでしょう。「今日は大丈夫そう」と思える日がある一方で、不安定さが目立つ日もあります。余計に戸惑いを感じてしまいますね。
春は、身体が冬の状態から切り替わる途中の季節です。完全に整う前の段階でゆらぎが出るのは自然な流れ。春のめまいは一時的な不安定さとして現れやすいのです。
春にめまいが起きやすくなる背景

なぜ調整が追いつかなくなるのかを、身体の働きから見ていきましょう。
肝が担う「調整役」の仕事が増える
東洋医学では、身体全体の流れをまとめる役割を肝(かん)が担うと考えます。肝は、気や血の巡りを整え、必要な場所へ適切に配分する働きをしています。
春は肝の働きが活発になる季節。冬の間に抑えられていた動きが一気に外へ向かうため、肝には多くの調整が求められます。仕事量が急に増えると巡りの調整が追いつかず、ふらつきや不安定さとして現れることがあるのです。
自律神経と血の巡りが影響を受けやすい
春は寒い日と暖かい日が入り混じり、天気も安定しません。身体は体温や血流を調整しながら環境に合わせようとします。
調整を担っているのが自律神経ですが、春は切り替えの回数が多く、調整が追いつかなくなりがちです。血管が縮んだり広がったりする動きが不安定になり、血の巡りにもムラが生じやすくなるんですね。
頭部へ届く血流も安定しないため、ふわっと浮くような感覚や、足元が定まらない感じとして現れることがあります。立ち上がった瞬間や、動きを変えたときに感じやすいのも、血流の不安定さが理由といえるでしょう。
緊張が続くと肝の余裕が失われやすい
肝は疏泄(そせつ)という働きを通して、全身の気や血の流れをスムーズに保つ役割を担っています。疏泄は、巡りを整えるだけでなく、張りつめた状態をゆるめる働きでもあります。
春は気を張る場面が増えやすいので、無意識のうちに緊張が続いてしまうこともあるでしょう。緊張状態が長引くと、肝が担う「ゆるめる」「流す」という働きは後回しになります。巡りを整える余裕が失われると、身体は細かな調整を続けられなくなるのです。忙しさから水分摂取が減ったり、食事の間隔が乱れたりすると、巡りを支える土台も弱くなります。肝の働きに余裕がなくなると、ふらつきや不安定さを感じるかもしれません。
春のスピードに巻き込まれないために

春は身体の調整役である肝に仕事が集中しやすい季節です。無理に立て直そうとするより、仕事量を増やしすぎない視点が大切になります。日常で意識しやすいポイントを整理してみましょう。
朝と夜のリズムを崩しすぎない
起床と就寝の時刻はなるべく一定にしましょう。30〜60分以内のズレに収めるのが目安です。春は日の出が早くなるので自然に目覚めも早くなりますが、夜は気持ちが高ぶり、眠りが浅くなりやすい傾向があります。
生活リズムが大きく変わると、自律神経や血の巡りを整える仕事が増えてしまいます。毎日きっちり揃えなくても大丈夫。大きく崩さないよう心がけていくと、身体の土台ができてきます。
「今日はここまで」と区切る習慣
春は不思議と動けてしまう日が増えます。調子がよいと、つい予定を詰め込みがちになりますね。時間に余裕を持ち、意識的に区切りをつけましょう。
外出や用事を重ねすぎず「今日はここまで」と線を引いていくと、肝や自律神経にかかる負担を減らせます。頑張れる日と控える日のバランスをとるのが、春の身体にはちょうどいいんですね。
めまいを記録し身体の傾向を知る
めまいが起きた時間帯・天候・疲れ具合などを、簡単に書き留めてみましょう。毎日続けなくとも、気になった日だけで十分です。
書き出してみると、身体の傾向が見えてくることがあります。
- 忙しい日が続いたあとに出やすい
- 天気が崩れる前に感じやすい
- 朝より午後に感じやすい
自分の傾向がわかると、気をつけたいポイントが整理されてきますよ。
春のめまいは頑張りすぎのサインかもしれません

春のめまいは、身体が一気に動き出したために現れる反応のひとつです。季節の変わり目、身体は環境に合わせようとしますが、変化のスピードについていけないこともあるんですね。
身体が発しているサインに気づいたら「無理しないほうがいい」の合図として受け取ってみてください。何かが足りないのではなく、負担が少し重なっているだけの場合も多いのです。春は自分で思うよりも心身が疲れがち。調子のよい日とゆらぐ日が混在しやすいのも春の特徴です。
当店では、生活リズムや身体の使いかたも含めてお話を伺っています。春のめまいを漢方の視点でみると、緊張が続いたり気が張った状態が長引いたりして、巡りが滞りやすくなっていることがあるんですね。
その場合、肝の疏泄(そせつ)という働きに着目し、状態に合わせた選薬を検討します。香蘇散(こうそさん)は、緊張が続いたときに用いられることのある漢方薬のひとつです。
身体全体の状態を一緒に整理してみましょう。無理を重ねず、早めにご相談くださいね。




