
検査では問題なしだったのに、身体はつらいまま。
日によって体調が違い、どう向き合ったらよいのかわからない。
身体を整えたくても、どう対処すればよいのか悩むひとはたくさんいます。自分の状態を理解できないままだと次の一歩が踏み出せませんね。漢方の視点を加えると、整えかたが見えてくるかもしれません。
健康を考えるうえでの手がかりとして陰陽(いんよう)の概念をご紹介します。陰陽は健康になるための答えではありませんが、今の心身がどの方向に傾いているのかを知るための考えかたです。
陰陽とは? すべてをふたつに分けて考える理由

漢方は「陰陽」の考えかたを基盤にしています。「陰陽のバランスが取れている」のが健康な状態なのです。自然界と同じように、対になる要素の関係性として捉えます。
陰と陽は正反対ではなく役割の違い
陰陽と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、とても身近な考えかたです。
陰は、休む・冷ます・潤す・内に向かう働き。静的で内向的なエネルギーを持ち、心身を落ち着かせる役割。
陽は、動く・温める・外に向かう働き。活動的で外向的なエネルギーを持ち、日中の活動・仕事・運動などを支える。
たとえば「夜は陰、昼は陽」であり「休む時間は陰、活動する時間は陽」です。どちらがよい悪いではなく、両方が必要なのがわかりますよね。どちらかに偏ると、無理が生じやすくなるのです。
自然のリズムと身体の状態は似ている

自然界は常に変化しています。「昼と夜」「夏と冬」があり、活動する時期があれば休む時期もあります。身体も同じように、動くときと休むときを行き来しているのです。陰陽は、心身の変化を理解するための物差しなんですね。
漢方が「今の状態」を重視する理由
同じように「冷える」「だるい」と感じていても、状態はひとそれぞれ違うでしょう。昨日と今日で調子が変わるのも、特別なことではありません。
- 寒さと暑さ、どちらがつらいか
- 身体を動かしたときと休んだとき、どちらが楽に感じるか
- 疲れやすい時間帯や季節があるか
漢方では、検査の数値だけで状態を判断しません。日常の感覚から、身体が陰と陽のどちらに傾いているのかを考えるのです。
なぜ不調が続くの? 陰陽のバランスが崩れる背景

不調が続くと「悪いところがあるのでは」と考えがちですが、漢方では不調を結果として捉えます。日々の過ごしかたや心身の使いかたが積み重なった結果、陰と陽のどちらかに偏りが生まれ、バランスが崩れていくのです。
がんばりすぎる生活が続くと陽に傾きやすい
忙しさが続くと、いつの間にか気を張った状態が当たり前になってしまいます。休んでいても、頭の中は常に動いている状態なんですね。
がんばりすぎる生活が続くと、身体は「動く・外に向かう」状態から戻りにくくなります。本来は休んで整えるはずの時間でも、陽の働きが強いままになるのです。
- 寝ても疲れが取れない
- 気持ちが落ち着かない
- ちょっとしたことで消耗する
といった変化が起こりやすくなります。一時的には動けるかもしれませんが、反動が出やすくなってきます。
回復力が追いつかなくなると陰が不足しやすい

年齢を重ねると体力にも変化があり、回復には以前より時間がかかるようになります。気づかず同じペースで動き続けると、休む力や潤す力が消耗してしまうのです。
陰は心身を落ち着かせ、回復を支える働き。陰が足りなくなると、身体は休みたくても休めない状態になってしまうんですね。その結果
- 眠ってもスッキリしない
- 疲れが翌日まで残る
- 乾燥やほてりを感じやすい
などの不調につながります。
毎日同じ調子で動こうとするとバランスが崩れる
心身の状態は日によって変わります。天候・気温・睡眠・気持ちも影響するため、毎日同じ体調で過ごせるとは限りません。「昨日と同じように動かなければ」と無理するのは、状態に合わない身体の使いかたをしていることになります。
陰陽は固定されたものではなく、日々の生活や環境により変化する動的な概念。陰陽の変化を無視すると偏りが積み重なり、不調が続きやすくなります。昨日と今日で心身が違うのは、自然なことなのです。
陰陽の視点を生活に取り入れよう

陰陽の視点を持つと自分の状態を把握する手がかりとなり、日々の過ごしかたを考えるうえで役立ちます。日常生活のなかで陰陽のバランスを意識し、調整していきましょう。
健康管理
食材にも陰陽があります。
〈陰の食材〉野菜・果物・豆類などがあります。身体を冷やし心を落ち着けてくれる食材ですが、食べ過ぎると身体を冷やしてしまいます。
〈陽の食材〉肉類・根菜類・香辛料などが該当します。身体を温め、エネルギーを与える特性を持ちますが、とりすぎると身体の緊張が強まることも。
陰の食材と陽の食材を組み合わせて、偏りを防ぎましょう。肉料理(陽)に野菜(陰)を添えるのは、理にかなっているんですね。季節や体調に合わせるのも大切です。夏は陰の食材を多めにとり、冬は陽の食材を意識的に増やすなどして、調整しましょう。
食事のほか、運動と休息のバランスも必要です。過度な運動は陽のエネルギーを過剰にし、休息が不足すると陰のエネルギーが足りなくなり、体調を崩す原因になります。適度な運動を取り入れ、十分に休息しましょう。
ストレス管理

リフレクション(内省)とアクション(行動)のバランスをとりましょう。
〈リフレクション〉考えすぎると陰の要素が強くなりすぎ、冷え・だるさ・むくみなどの身体的な不調が現れることがあります。過度な思考や内省が行動を制限し、エネルギーの流れを滞らせてしまいます。
〈アクション〉一方で行動のみを重視しすぎると陽のエネルギーが過剰になり、ほてり・不眠・イライラなどの症状が現れやすくなります。行動が多すぎると心身の疲労を招きます。
瞑想やマインドフルネスで陰のエネルギーを取り入れるのもおすすめです。深呼吸はシンプルで手軽な方法です。心身の健康を維持するため、ぜひやってみてください。
日常生活のリズムを整える
季節の変化に応じて、生活リズムや活動内容を調整しましょう。
〈冬〉陰が強くなります。日照時間が短く、寒さで疲れやすくなります。食事で身体を温め、睡眠の質を高めるため環境を整えましょう。
〈夏〉陽のエネルギーが強く、近年は気温がとても高くなります。食欲が減退しがちですが、ビタミンやミネラルを含む食材で体調を整えましょう。冷やしすぎはよくないので、常温や温かい飲み物も取り入れるといいですね。
自然のリズムに合わせた生活で、陰陽のバランスを保つこともできます。日常に取り入れてみてください。
- 朝日を浴びる:体内時計を整え心身の活力を高める
- 食事のタイミングを整える:朝は軽め、昼はしっかり、夜は消化のよいものを
- 自宅の環境:夕方以降は静かな環境で落ちつける時間をもつ
- 活動時間:日中は活動的に過ごし、夜はリラックスする時間を持つ
- 季節に合わせた活動:春夏は外で過ごす時間を多くし、秋冬は室内でリラックスする
陰陽を知ることは自分を知ること

陰陽は、不調を治すためだけの考えかたではありません。今の状態を理解するための物差しと捉えてください。ゆらぎがあるのは自然なことで、自分の現状を把握できれば整えかたも見えてきますよね。
たとえば「冷え」を感じている場合でも、背景はひとつとは限りません。陰虚(いんきょ)と陽虚(ようきょ)という異なる体質で比べてみましょう。
- 〈陰虚〉体内の潤いが不足していると考えられ、乾燥やほてりを伴う冷えを感じることがある。温めるとのぼせてしまうので、レッグウォーマーなどで足首のみ温める。
- 〈陽虚〉身体を温める働きが弱くなりやすい状態とされ、冷えやすさや疲れやすさを感じることがある。背中の上の方にカイロを貼る、腹巻やくるぶしまで隠れる靴下を活用するなどして保温を。
同じ「冷え」でも状態により見方が異なるんですね。それぞれに合う考えかたで身体と向き合うのが大切です。
当店では検査結果の数値だけでなく、日常の感覚や困りごとを大切にしています。陰陽の視点が、あなたの心と身体を見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。




