
健康診断の結果。血圧の数値が前年より高いと気になりますよね。「年齢のせいでしょう」といわれ、深刻に受け止めすぎてもいけない気がして日常に戻っていくこともあるでしょう。
検査結果をきっかけに来店されるお客さまもいらっしゃいますが、血圧の話題は出ても、腎機能については触れないまま終わることが多いです。
血圧と腎臓は別々に考えられがちですが、実際には身体の中で深く関わり合っています。両者の関係を知るのが、身体を理解するための一歩になるかもしれません。
血圧と腎臓の関係は? 身体の中で起きていること

「血圧」と聞くと、血管や心臓が思い浮かぶのではないでしょうか。腎臓の働きが関わっているのを意外に感じるかもしれませんね。腎臓は血液をろ過する臓器として知られていますが、血圧の調整にも関わっています。
腎臓は血圧を感知する臓器
1日に腎臓を通過する血液量は約150リットル。大量の血液が行き交う場所だからこそ、血圧の変化を敏感に感じ取れるのです。腎臓は、血液の量や流れに異変が起きるとすぐに反応し、体内の水分や電解質のバランスを維持しようとします。
レニン分泌と血圧調整のしくみ
血圧が下がると、腎臓からレニンという物質が分泌されます。レニンは血圧を上昇させるための、身体の自然な働きです。「血圧を上げる方向に働く」と聞くと不安になるかもしれませんが、本来は命を守るために備わった仕組み。体内の血圧を維持するために欠かせない酵素なのです。
RAASによる血圧調整の流れ
レニンをきっかけに、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)が働きます。RAASは血管を収縮させ、体内の水分や塩分を保持することで血液量を増加させようとします。
寒さを感じたときや体調がゆらいだときに役立つ反応なのですが、この状態が長く続くと腎臓や血管に負担がかかりやすくなるのです。
なぜ腎機能が落ちると血圧が上がるの?

血圧が高くなった原因がはっきりせず、不安を抱えたまま過ごしているひとも多いでしょう。腎臓の調整力が弱まると、血圧のバランスも崩れやすくなってしまいます。
塩分と水分バランスの乱れ
特別に濃い味付けをしていなくても塩分は少しずつ積み重なり、水分を身体にため込みやすくなります。
身体に水分がたまるのは血液量が増えることを意味し、血圧が上がりやすくなるのです。心臓が、より多くの血液を送り出さなければならないからです。知らないうちに負担がかかっているケースも珍しくありません。
冷えやストレスが腎の血流に与える影響
漢方相談ではお客さまの手足に触れさせていただくこともありますが、身体が冷えている方がほとんどです。
冷えが続くと血管は収縮しやすくなります。緊張やストレスが重なると、さらに血流は滞りがちに。腎臓への血流が減ると必要な酸素や栄養を受け取れなくなり、腎機能が損なわれる可能性があります。血圧の調整もうまくいかなくなるのです。
加齢と生活習慣による腎機能の変化
腎機能は年齢とともにゆるやかに変化し、一般的には30〜40代をピークに、徐々に低下していくとされています。
腎臓の健康を知るための指標にeGFRがありますが、値が低いほど腎機能が低下していることを意味します。eGFRが下がっても自覚症状がほとんどないため、問題が見えにくいんですね。
腎機能が低下していても、血圧の上昇だけが表に現れることもあるのです。
腎を守りながら血圧と向き合うための視点

血圧の数値を意識し始めると、制限や我慢を思い浮かべがちですね。無理しすぎると、つらいだけの場合もあります。続けられることを大切にしましょう。腎臓の特徴を知ると、生活の見直し方が変わります。
薄味でも満足感を得る工夫
料理を薄味にすると、どうしても味気なさを感じてしまいますね。慣れの問題もありますが、工夫次第で感じ方が変わってきます。食事を楽しむのも、身体にとって大切な要素です。
- 旨みを引き出す:昆布・かつお節・きのこ類からダシを。干しエビ・海苔など天然の旨み成分を活用
- 酸味をプラス:柑橘類・酢などを揚げ物やサラダに
- 香りを利用:にんにく・生姜・しそなどで風味豊かに
- コクを加える:バターやごま油を仕上げに少量
- 食感を工夫:具だくさん料理で食べ応えを得る
家族で同じ料理を共有するなら調味料の「後がけ方式」がいいですね。
腎を温める生活習慣
腎は冷えに弱いと考えられています。腰・下腹部・足を冷やさない工夫は日常に取り入れやすい対策なので、少し意識してみましょう。
- 温める食材を取り入れる:生姜・ネギ・ニラ・シナモンなどを活用。内側から身体を温める
- 冷たい飲み物・生ものを避ける:冬場は特に気をつけたい
- 適度な運動:血行をよくし体温をあげるのに役立つ
- 入浴習慣の見直し:38〜40℃のお湯にゆっくり浸かり身体全体を温める
- 睡眠環境を整える:寝室を温めておく・吸湿性の高いパジャマを選ぶなど
- ストレス管理:リラックスできる時間を持ち、趣味や軽い運動でストレス軽減を
東洋医学における腎と気(き)の考えかたを取り入れる
血圧や腎機能の数値が気になり始めると「悪化させないように」「抑えないと」という意識が強くなりがちです。
東洋医学では、腎は生命力の土台と考えられています。生きるためのエネルギーを蓄え、身体を内側から支える存在なのです。
腎の働きを支えているのが、気(き)と呼ばれるエネルギー。気が十分に巡っていれば身体は無理なく調整しようとしますが、疲れ・冷え・緊張が重なると、気の巡りは滞りやすくなるんですね。
積み重ねが腎の力を守ります。血圧と向き合うとき「抑える」よりも「支える」という考え方を持つと、続けやすくなりますよ。
身体が本来備えている働きに目を向けましょう

高血圧は、年齢だけで説明できるものではありません。腎臓の働きを知ると、血圧の背景が見えてくることがあります。当店では、数値だけを切り取って判断しません。生活習慣や身体の感覚も含めて、全体を見ていきます。
血圧が気になり始めたお客さまから「頑張りすぎている」「休むのが苦手」という印象を受けることがあります。
東洋医学の視点を取り入れるのは、数値のコントロールが目的ではありません。身体への負担に気づき、消耗を減らす方向に意識を向けるのが大切なのです。
- 冷えをため込まない
- 休む時間を削りすぎない
- 気持ちを張りつめたままにしない
不安を抱えたまま過ごすのはストレスになりますよね。小さな気づきから身体と向き合っていきましょう。




