夏風邪は冬の風邪よりも治りにくく感じることがあります。のどの痛みや発熱が続くと「いつになったら仕事に行ける?」「楽しみにしていた予定をあきらめなきゃならないの?」と不安になりますよね。
働き盛りの方や子育て中の方は「早く治したい」「仕事を休めない」と焦りがちですが、間違った対処が症状を悪化させることもあります。
夏風邪を長引かせる原因と避けるべきNG行動、早く治すための正しい方法をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
夏風邪が長引く主な原因

室内外の温度差による自律神経の乱れ
夏は暑い外と冷えた室内の温度差が大きくなりやすいのですが、7度以上の差は身体に負担をかけます。温度差が原因で自律神経が乱れると、体調の回復が遅くなることがあるのです。
エアコンは外気温との差を5〜7度以内に設定し、身体への負担を減らしましょう。
睡眠不足と疲労の悪循環
暑さで寝苦しいと深い眠りがとれず、成長ホルモンの分泌が減ります。これが免疫力の回復を遅らせ、疲れがたまると夏風邪が長引いてしまうんですね。
通気性のよい綿・麻などの寝具や涼感寝具を使って、睡眠環境を整えましょう。
胃腸機能の低下と栄養吸収の悪化
冷たい飲み物や食べ物ばかりとっていると、胃腸の働きが弱くなります。漢方では胃腸を「脾胃(ひい)」といいます。脾胃が弱ると栄養の吸収が悪くなり、夏バテや免疫力低下につながるのです。胃腸にやさしい食事を心がけましょう。
夏風邪のとき絶対NGな行動3選

すぐに解熱剤を服用する
発熱は、免疫がウイルスや細菌と戦っているサイン。漢方では発熱を「正気(せいき)と邪気(じゃき)の闘争」と考えます。
- 正気:身体の抵抗力や免疫力を指す。健康を維持する力。
- 邪気:病原体や外部からの有害な影響を指す。身体に悪影響を及ぼす要因。
漢方の視点からみると、発熱は身体の自然な反応なんですね。無理に熱を下げると回復を遅らせる場合があります。38度台までは様子をみて、解熱剤の使いすぎに注意しましょう。
高熱が続いたり他の重篤な症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
栄養ドリンクやエナジードリンクに頼る

栄養ドリンクに含まれるカフェインは身体を興奮させ、必要な休息を妨げます。糖分の多さも血糖値の乱れを招き、免疫力を下げる原因になるのです。栄養ドリンクが身体の内側の熱を強め、症状を悪化させることもあるんですね。漢方では閉門留寇(へいもんりゅうこう)と表現します。
邪気が体内に侵入しているときに栄養補給などで身体の守りを固めてしまうと、かえって邪気を体内に閉じ込めてしまい、病状を長引かせたり悪化させたりするという考え方です。
栄養ドリンクなどの補益(ほえき)作用があるものは、病邪を追い出したあとに摂取するのが基本なのです。
※体力が著しく低下している場合などを除く
ビタミンCサプリの大量摂取
適量のビタミンCは健康維持に役立ちますが、過剰にとると胃腸に負担がかかり、逆効果になることがあります。
厚生労働省では、成人の推奨摂取量を性別にかかわらず1日100mgとしており、通常の食品以外から1日に1,000mg以上を摂取することは推奨していません。
バランスのとれた食事から適量をとるほうが身体にやさしい方法です。
早期回復のための正しいアプローチ

身体のサインを記録する
毎日時間を決めて体温を測り、記録してみましょう。熱の上昇や下降のパターンが把握できます。熱だけでなく、咳や喉の痛み、鼻水など他の症状も記録しておくと、医師に相談する際に役立ちますよ。
高熱(39℃以上)が続く場合・呼吸困難・胸の痛みなどの重篤な症状が現れたら、すぐに受診してください。
水分補給や休息を心がけ、必要に応じて医療機関を受診することで、早期回復を目指しましょう。
身体を冷やしすぎない生活環境をつくる

エアコンを使う際は、外の気温との差を5度〜7度以内に設定しましょう。エアコンの風が直接当たらないよう調節したり、扇風機を併用して空気を循環させるとよいですね。
湿度を40〜60%に保つと乾燥を防ぎ、喉や鼻の粘膜を守れます。こまめな水分補給は大切ですが、冷たい飲みものは避けましょう。
胃腸をいたわる食事と自然な栄養摂取
消化のよい温かい汁物やおかゆで胃腸を休ませるのが大切。旬の野菜や果物からビタミンやミネラルをとると、体調を整えやすくなります。漢方の「薬食同源(やくしょくどうげん)」の考え方を意識しましょう。
薬食同源:食べものと薬は同じ源から来ており、すべての食材には健康を促進する効能があるという考えかた。漢方医学において非常に重要な概念。
焦らないで! 回復力を支える行動が最短の道

夏風邪がなかなか治らないと焦ってしまいますよね。よかれと思ってしていることがNG行動だった! という方もいらっしゃるでしょう。気持ちはよくわかりますが、身体は回復の力を持っています。無理に症状を抑えるよりも、身体の回復力を支えることが回復の近道につながるんですね。
最後に大切なことをひとつ。漢方薬で風邪薬といえば葛根湯(かっこんとう)を思い浮かべる方が多いと思いますが、風邪の万能薬ではありません。風邪のタイプによっては悪化することもあるのです。以下の記事を参考にしていただき、薬剤師にご相談くださいね。
当店では、体質や症状に合った方法をご提案します。焦らずに夏風邪の早期回復を目指しましょう。