
腎臓病と診断され、運動をあきらめる方は多いでしょう。激しい運動はクレアチニン値を上昇させるリスクがありますが、適切な方法であれば運動を続けられます。むしろ、腎臓病の進行を遅らせ、生活の質を向上させるために運動療法は重要な役割を果たすんですね。
今回は、安全に身体を動かすための具体的な方法をご紹介します。
※運動療法は、腎臓病の病状が安定していることが前提です。運動の種類や量は医師に相談してください。
腎臓病での運動制限はなぜ必要なのか

激しい運動がクレアチニン値を上昇させる仕組み
クレアチニンは、筋肉でエネルギーを作る際に生成される老廃物です。通常は腎臓でろ過され尿として排出されますが、激しい運動をすると筋肉の代謝が活発になり、大量のクレアチニンが作られます。
健康な腎臓であれば問題ありませんが、腎機能が低下している場合、処理能力が追いつかずクレアチニン値が上昇してしまうんですね。これが運動後に数値が悪化する原因なのです。
避けるべき運動の具体例は以下です。
- 短距離走やダッシュ
- 重いウェイトトレーニング
- 長時間の激しいスポーツ(テニス、バスケットボールなど)
- 息が上がるほどの有酸素運動
腎臓病のひとには適度な運動が推奨されています。健康状態に合ったプランを立てるのが重要です。
水分バランスの乱れが引き起こす問題

水分を調節する腎機能が低下しているので、運動による発汗で体内の水分バランスが崩れやすくなります。脱水状態になると腎臓への血流が減少し、腎機能がさらに悪化する可能性があります。一方で、水分を摂りすぎると体内に溜まってしまい、むくみや血圧上昇の原因となってしまうのです。
大量の汗をかく運動(サウナスーツを着た運動、炎天下でのスポーツなど)は十分な注意が必要です。
血圧変動による腎臓への負担
急激な運動は血圧を大幅に上昇させます。腎臓病の方の約8割は高血圧を併発しており、血圧の急上昇は腎臓の細い血管に大きな負担をかけてしまいます。
血圧管理は腎機能保護の基本です。運動するときも、血圧の変動を最小限に抑えることが重要なんですね。
腎臓病のひとが運動で困る3つの原因

正確な情報不足による不安の増大
医療機関によって運動指導の内容が異なることがあります。「A病院では軽い運動を勧められたのに、B病院では安静にするよういわれた」と、混乱を経験されるひともいらっしゃるんですね。
日本ではまだ、腎臓病患者に対する運動療法への取り組みが十分広まっていません。医療従事者への教育や設備が整っていない医療機関も多いのです。
腎臓病のひとに特化した運動方法の情報も不足しており、個別の状態への対処法を見つけるのは困難です。認知不足や情報不足が不安を増大させ、結果的に運動をあきらめてしまう原因となっています。
体調の波による運動計画の立てにくさ

腎臓病は日々の体調変動が大きく、「昨日は元気だったのに今日はだるい」ということがよくあります。定期的な運動スケジュールを立てても体調不良で中断するなど、継続の難しさを感じているかもしれません。
また、定期検査の結果によって運動制限が変更されるのも一般的です。患者は柔軟に運動計画を変更する必要があるんですね。
専門指導者の不足と孤独感
腎臓病に対応できる運動指導者は限られており、一般的なフィットネスクラブやスポーツ施設では適切な指導を受けられないことが多いです。
同じ病気を持つ仲間との交流機会がないと、「自分だけが制限の多い生活を送っている」という孤独感を抱えがちです。
腎臓病でも安全に運動を続ける3つの方法

低強度有酸素運動を基本とした運動プログラム
最も安全で効果的なのは、隣の人と会話ができる程度の強度での有酸素運動です。「ややきつい」と感じる手前の強度で、腎機能を保ちながら健康を促進するために理想的なんですね。心拍数でいうと最大心拍数の60〜70%程度になります。
〈具体的な運動例と頻度〉
- ウォーキング:1日20〜30分・週3〜4回
- 室内での踏み台昇降:1日15〜20分
- ストレッチやヨガ:毎日10〜15分・週2〜3回
- ラジオ体操:毎日1〜2回
〈水中運動のメリット〉
浮力により関節への負担が軽減され、水圧により血行も促進されます。筋力低下を防ぐためにも効果的です。水中ではリラックスできるので、ストレス軽減にも役立ちますよ。
体調に合わせた柔軟な運動計画
固定的なスケジュールではなく、その日の体調に合わせて運動内容を調整することが継続の秘訣です。
〈調整方法の例〉
- 体調良好日:通常の運動メニュー
- 少し疲れ気味:ストレッチ中心の軽い運動
- 体調不良日:深呼吸や軽いマッサージのみ
運動するのが難しい場合は、身体を休めるのが最優先です。
〈運動日記の活用〉
体調・血圧・運動内容・運動後の気分などを、簡単に記録してみましょう。自分に適した運動パターンが見えてきます。運動量や進捗を視覚的に確認できると、モチベーション維持にもつながりますよ。医師との相談時にも有効な資料になります。
東洋医学的アプローチによる身体づくり

東洋医学では腎臓を先天の本(せんてんのほん)と位置づけ、生命力の源として重視しています。腎機能を補強する漢方薬と適切な運動を組み合わせると、より効果的な体質改善が期待できます。
八段錦(はちだんきん)・太極拳などの推奨
中国古来の健康法である八段錦や太極拳は、ゆっくりとした動作で気血の流れを整え、腎機能の改善に役立ちます。激しい動きがないため、腎臓病のひとでも安全に実践できます。
腎を補う食材との相乗効果
黒豆・黒ごま・山芋・クコの実などの「腎を補う」とされる食材を運動前後に摂取しましょう。より効果的な体力回復が期待できます。
漢方薬との組み合わせ効果
個人の体質や症状に応じた漢方薬を取り入れてみませんか? 適度な運動と組み合わせ、腎機能の維持・改善と生活の質の向上を図りましょう。
運動は長い目でみて少しずつ

腎臓病と診断されても、希望を持ち続けることがなにより大切です。当店の多くのお客さまが、適切な運動と漢方薬の組み合わせにより、クレアチニン値の安定や体調の改善を実感されています。
先日も、透析導入を宣告されていた60代の男性から嬉しいご報告をいただきました。太極拳と漢方薬を始められてから半年で数値が改善し、透析開始を延期できたというのです。
完璧を求めすぎず、今日できる範囲で身体を動かす心構えが継続の秘訣です。体調が優れず運動できない日があっても、自分を責めないでくださいね。長い目でみて、少しずつでも続けるのが大切なのです。
腎臓病について不安や疑問がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの体調や生活スタイルに合わせて、最適な漢方薬や生活習慣をご提案します。腎機能維持に向けて、一緒に取り組んでいきましょう。
※この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。運動を始める前には、必ず主治医にご相談ください。
【書籍のご紹介】
腎臓病の方にとって運動は「控えるべきこと」とされてきましたが、最近では「適度に取り入れるとよいこと」と、考え方が変わりつつあります。ただ「どんな程度で?」「どんな運動をすればいいの?」と、疑問もありますよね。おすすめしたいのがこちらの書籍です。
『弱った腎臓を自力で元気にする方法』(著:上月正博/アスコム)
上月正博先生は東北大学名誉教授で、腎臓病と運動療法の研究を長年続けてこられた専門家です。わたしも読みましたが、具体的な運動方法が書いてあり、とてもわかりやすい内容でした。ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください^^
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