風邪のタイプに適した漢方薬の選び方

風邪を引いたとき、多くの方が「葛根湯（かっこんとう）」を思い浮かべるかもしれませんね。しかし風邪のタイプや症状に応じて、他にもさまざまな漢方薬が存在します。

漢方医学では「風寒（ふうかん）」と「風熱（ふうねつ）」というふたつのタイプに分けて風邪を捉え、それぞれに合う漢方薬を使い分けます。本日は、風邪タイプに基づいた漢方薬の選び方をご紹介しましょう。

選薬を誤ると症状が悪化する可能性があります。ぜひ参考にしてください。

風邪のタイプと漢方医学の考え方

漢方における風邪の捉え方

漢方医学では、風邪は体外からの邪気（じゃき）によって引き起こされると考えます。外部から身体に入り込み、病気を引き起こす原因のことを邪気と呼びます。

邪気の種類や身体の状態に応じて、風邪は大きく風寒（ふうかん）と風熱（ふうねつ）の2つのタイプに分けられます。

風寒は寒邪（かんじゃ）という冷たい邪気が身体に侵入したもの。風熱は熱邪（ねつじゃ）が身体に入り込み、熱が体内にこもる状態です。

風寒（ふうかん）タイプの風邪とは？

風寒タイプは、風邪と寒邪が組み合わさったもので、冷気にさらされたことで起こる風邪です。

主な症状

• 寒気
• くしゃみ
• 頭痛
• 関節痛
• 無汗
• 透明で水っぽい鼻水

風寒タイプの風邪は、身体が冷えているため発汗がうまくできないことがあります。身体の表面に邪気が滞っている状態です。身体を温めて発汗を促すことが、風寒タイプの症状緩和に役立ちます。

風熱（ふうねつ）タイプの風邪とは？

風熱タイプは、風邪と熱邪（ねつじゃ）の組み合わせで、熱邪が炎症や熱を引き起こすことが原因です。

主な症状

• のどの痛み
• 発熱
• 咳
• 黄色い痰（たん）
• 口渇
• 発汗

風熱タイプの風邪には、身体を冷やし、熱を取り除く効果のある漢方薬が適しています。

風寒タイプの風邪に適した漢方薬

葛根湯（かっこんとう）

風寒タイプの初期によく使われるのが葛根湯です。身体を温め、発汗を促し、寒さからくる風邪の症状を和らげます。寒気や筋肉のこわばりを感じたときに服用することが推奨されます。

麻黄湯（まおうとう）

麻黄湯は、特に寒気が強く、発汗が不足しているときに向いています。麻黄湯は発汗を促し、風寒タイプの風邪の症状緩和が期待できます。ただし、体力が低下している場合や高齢者の方には慎重に使用する必要があります。薬剤師に相談しましょう。

小青竜湯（しょうせいりゅうとう）

痰（たん）が絡む咳や鼻水が続く場合には、小青竜湯が役立ちます。特に寒さによる鼻水や痰を伴う症状に対して有効です。身体を温め、痰を除去し、風寒の症状を緩和します。

風熱タイプの風邪に適した漢方薬

銀翹散（ぎんぎょうさん）

風熱タイプの初期には銀翹散がよく使われます。発熱や喉の痛み、咳といった炎症性の症状緩和に向いています。風寒タイプとは異なり、身体を冷やす作用があります。特にのどが赤く腫れたり、熱感が強い場合に有効です。

桔梗湯（ききょうとう）

主な症状がのどの痛みの場合には、桔梗湯が適しています。のどの炎症や不快感を和らげるために使われます。風熱タイプの風邪の症状が強い場合に使用することが多いです。

麦門冬湯（ばくもんどうとう）

乾いた咳が続く風熱タイプの風邪には、麦門冬湯が向いています。咳を和らげ、喉の乾燥感を緩和するのに役立ちます。特に喉の渇きやしつこい咳の症状を和らげるために使用されます。

風邪のタイプを知り適切な漢方薬を選ぶために

風邪といえば早めの葛根湯！ 漢方薬をあまり知らなくても、葛根湯だけは風邪薬だと知っているひとが多いですよね。

しかし葛根湯は風邪の万能薬ではありません。身体を温める作用があるので、熱がこもった風熱タイプの風邪には向かないんですね。

誤った選薬をすると、症状が長引いてしまうことがありますよ。今回は風邪のタイプによる薬を紹介しましたが、風邪かな？ と思ったら、風寒タイプか風熱タイプかの見極めを薬剤師に相談しましょう。

体質により適切な漢方薬は異なる場合があります。自己判断は避けてくださいね。

寒邪は寒さによる影響ですから、これからの季節は注意しましょう。

悪寒や関節痛、筋肉のこわばりなどが現れたら風寒タイプ。身体が冷えているので汗をうまくかけません。風寒タイプの漢方薬を服用したら、布団にくるまって汗を出すのが早く治すポイントです。

反対に、発熱やのどの痛み、口が渇く場合は風熱タイプです。熱邪は性質上、上に向かっていくので、顔が赤くなったり頭痛がしたりするのです。体内の水分が失われやすいので、水分補給を心がけましょう。熱を和らげるのにも役立ちますよ。

疲労や生活習慣・ストレスなども原因となりますので、休養はしっかりとってくださいね。