
空気が冷たくなる季節は肌がゆらぎやすくなります。「毎日スキンケアしているのに追いつかない!」と感じませんか? 冬の乾燥には内側からのケアが大切なのです。視点を変えると乾燥に強くなるヒントが見えてきますよ。
乾燥による皮膚トラブルは肺と腎の影響がある

冬に増えやすい粉ふき・赤み・かゆみ。背景には肌そのものだけでなく、うるおいを支える「内側の働き」が関わると、東洋医学では考えられています。
肺は肌のバリアを支える
肺は皮膚や粘膜の健康を担う重要な臓で、乾燥にとても敏感。季節の変わり目に赤みが出たり、洗顔後につっぱる感覚が続いたりするひとは、肺の働きが不安定なのかもしれません。
冬の空気は身体の弱点を容赦なく刺激し、肌の負担が一段と増える時期なのです。
腎は深いうるおいを蓄える
腎は身体のなかにあるうるおいを保つ土台のような存在。年齢を重ねるにつれて乾燥が強まるのは、腎の力がゆっくり低下していくからです。疲労や睡眠不足が重なると、肌が突然荒れたり、粉ふきが止まらなくなったりすることも。
更年期の女性は冬に乾燥を強く訴える方がぐっと増えます。
肺と腎の弱りが重なりやすい
冷え・乾燥・ストレスが重なると、肺と腎の両方に負担がかかります。肌は「守りを失った状態」になりがちなんですね。保湿を重ねても追いつかず、毎年同じ悩みを繰り返しているのではないでしょうか。
冬の刺激は強いので、ケアを続けても肌が落ち着くまでに時間がかかることがあります。うるおいを支える仕組みを理解すると、冬の肌ケアが変わってきます。
冬に乾燥が起こりやすい原因

乾燥のきっかけはひとつではなく、いくつもの要因が重なっています。普段何気なく過ごす環境が、肌にとっては厳しい条件になっていることもあるのです。
空気の乾燥
加湿していない室内は湿度30%台まで下がることもあり、肌から水分が逃げやすい状態です。肌のバリアがゆるみやすく、かゆみや赤みなどの不快を感じる場面が増えてくるんですね。
湿度30%前後の環境では肌トラブルが多いと覚えておきましょう。
冷えによる血行不足
身体が冷えると血の巡りが鈍ります。皮膚に届けたい栄養が行き渡りにくくなる→うるおいを保ちにくくなる→刺激に反応しやすい状態になる。悪循環ですね。
巡りの低下は、肌のくすみや乾燥の強さにも現れています。
水分不足・生活リズムの乱れ
水分不足になると、肌は内側から乾きやすくなります。睡眠不足も肌に大きな影響があり、バリアが弱まるのでかゆみや赤みが出やすい状態になるんですね。
オフィスの乾燥した空気、屋外での強い風、水仕事の多い生活など、環境から受ける負担も大きいのです。
乾燥をやわらげる生活習慣

「しっとりとした肌で過ごしたい」「粉ふきを減らしたい」「かゆみを落ち着けたい」という願いに向けて、日常に取り入れやすいケアを紹介しましょう。
保湿は回数とタイミング
入浴後の肌は水分が失われやすい状態です。入浴後10分以内の保湿が推奨されることが多く、肌の乾きを防ぎやすいとされています。入浴中の肌が水分を含んだ状態は、持続しないんですね。
乾燥が強まる時期は、朝・昼・夜とこまめに保湿しましょう。冬は油分の多いクリーム等を重ねるなど、なるべく肌の水分を失わないようなケアを。
子どもはバリア機能が未熟、高齢者はバリア機能が低下しており、非常に乾燥しやすい状態です。環境にも配慮が必要ですね。
水分補給と室内環境の整えかた
水分摂取量の目安として、1日1.2〜1.5Lがよく参考にされます(一般的な成人に対する基準の一部)。冬は水分補給がおろそかになりがち。「30分ごとに白湯をひと口」でもよいので、意識的に水分をとりましょう。
暖房を入れた部屋は、湿度40〜60%を保つのが理想です。湿度計を利用するとよいでしょう。普段過ごす環境(屋内・屋外など)による乾燥もあります。合間の保湿や加湿を心がけてください。
肺と腎をいたわる食材選び
東洋医学では「白い食材」が肺をうるおすとされ「黒い食材」は腎を助けると考えられています。料理に取り入れてみましょう。
〈白い食材〉
- れんこん:粘膜を整える食材とされる
- 白きくらげ:古くから“うるおいを意識した食養生”に用いられることがある
- 豆乳:身体をなめらかにうるおす食材として親しまれる
- 白ごま:皮膚をしっとりさせたいときに取り入れられることが多い
- 大根:巡りを助ける食材として東洋医学で重視される
〈黒い食材〉
- 黒ごま:東洋医学では“腎”と結びつく食材としてよく登場
- 黒豆:腎を補う食材として知られ、冬の食養生に取り入れられる
- 黒きくらげ:血の巡りを意識したいときに使われる食材
- 黒米:古くから“巡りを整える”食材として親しまれてきた食材
- ひじき・海苔:ミネラルが豊富で腎を意識する食養生に用いられる
早めのケアで乾燥の不快を減らしましょう

冬の乾燥は、意識したときがケアの始めどき。肌の乾きといっても、肺や腎の弱り・血の巡りの低下・環境など、ひとによって背景は異なります。乾燥の状態に合わせて選ばれることのある漢方薬を紹介しましょう。
- 肌のつっぱりが目立つ→ 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
- 深いうるおい不足を感じやすいタイプ→ 六味丸(ろくみがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)
- 乾燥とかゆみに加え、ほてりを抱えている→ 滋陰至宝湯(じいんしほうとう)
- 冷えや血行不足が気になる→ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
これらはあくまで一例で、体質によりお選びする漢方薬は変わります。当店では、生活リズムや季節による体調の変化までていねいに伺い、体質に合う選薬をしています。肌のお悩みについてもどうぞご相談くださいね。





